2021年から毎年実施されてきた【朝日ホラーコミック大賞】が、このたび大人のタブー恋愛をテーマとする新レーベルの立ち上げに伴い、【朝日コミック大賞】としてリニューアル。選考会の様子をお伝えする最終回の今回は「原作部門」(ホラー・サスペンス、日常×ファンタジー、大人のタブー恋愛、ジャンル横断)の選考の様子をお伝えする。

の3部門。また、それぞれのジャンルで小説形式の原作大賞も用意された。

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 原作部門の選考にあたったのは、漫画家の伊藤潤二さん(選考委員長)、漫画家の波津彬子さん(選考委員)、「ほんとにあった怖い話」シリーズ(フジテレビ)監修の後藤博幸さん(選考委員)、東宝株式会社映像本部 開発チームリーダーの馮年さん(選考委員)と朝日新聞出版コミック編集部の畑中雄介編集長の5人。

「筒井康隆の短編小説を思わせる作風」と語る、伊藤順二さん(写真すべて:東川哲也/朝日新聞出版写真映像部)
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 原作部門(ジャンル横断)の総応募数は119作品。応募作はすべて、事前にコミック編集部員が「〇、×、△」で評価。絞り込まれた数作を対象に、コミック編集部員が司会を務める選考会が開かれ、選考委員の5人が選考に臨んだ。

 結果、決まった受賞作品は次の通りだ。

大賞は選考委員の満場一致!

伊藤:大賞の『神のペットを整える』はユーモラスで面白かったですね。筒井康隆の短編小説を思わせる作風でした。

 変な形の動物(神のペット)が出て来て、舞台はそのトリミングサロン。ところがペットの動きが地球規模の天変地異につながっている、っていうところはSFっぽい。ペットが動くたびに「地球の危機だ!」っていうドタバタがナンセンスでよかったです。

波津:『神のペット…』はコミカライズすることを考えると、一番キャラクターが立ちやすいですね。ただ、描く人が肝心のペットをどうビジュアル化するかにかかってる、という大問題はありますけど。

馮年;『神のペット…』は登場する3人のキャラクターのバランスがとてもよかったんです。主人公が一番冷静で、ちゃんとツッコミ役になっている。ムキムキのペットサロンの店長と、生真面目な先輩と。

波津:求人に応募したのに最後まで流されないんですよね。主人公が。

馮年:ちゃんと最初から布石が打ってあるんですよ。「自分は絶対に嘘はつけない性格です」って面接で話しているんです。その布石が最後のツッコミに生きている。ただノリで書ききったんじゃない、技術を感じました。

「技術を感じる作品」と語る、馮年さん

波津:でもこれ、漫画家さん大変だと思いますよ(笑)。だって「変わった形のペットがやってきた」って文章には書けるけど、それはどんな形なのか、絵にするのは大変ですよ。

司会:変わっていて、それでも可愛くないといけないですしね。

伊藤:見てみたいですよね。

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遠慮しておきます(笑)