いい子でいれば振り向いてもらえる
「両親に私を見てもらいたかったんです。いい子でいれば振り向いてもらえるのではないかと、自分の能力以上に頑張っていました」
母親は些細なことで怒り、衝突すると数週間ネコゼさんを無視し続ける。父親とは会話がない。勉強して偏差値を20以上伸ばして高校に合格した時も、喜んで報告するネコゼさんに、父親は背を向けた。
頑張っても、成果を出しても、報われない――。家族との折り合い、学校でのストレスから自傷行為をした。強迫行為は続き、年上の男性とすれ違うことも怖くなった。
そんな苦しい日々を送っていた高校生時代のネコゼさん。最初の大きな転機は、精神医療につながったことだった。「強迫性障害」を知り、自分の苦しみに名前があったこと、治療ができることを知る。精神科を受診したいと告げ、渋る母親を説得して、精神科に行った。
私に興味なんてないんだ
はじめての精神科では「統合失調症」と誤診され、出された薬が合わず歩くことも読み書きもできなくなり休学した。1年後、通院と服薬を拒否し、改めて精神科で強迫性障害という診断を受けた。治療を始めると、だんだん体の調子がよくなり、考えられるようになってきた。両親のことも、一歩引いた目で見られるようになった。
そして、気づく。「2人とも私に興味なんてないんだ」。
苦しむ娘を医者に任せて放置する母親。娘が病気になっても無関心の父親。
ネコゼさんは祖父母宅への居候を決める。両親に失望しての決断だったが、すんなり要望は受け入れられた。ネコゼさんは言う。
「母が私を引き止めてくれるのではと、どこかで期待していたのかもしれません」
だが、家を出てからも〝家族の呪い〟は解けなかった。
※後編へ続く
(構成・ライター 羽根田真智)