ベストセラーとして愛されてきた多くの絵本の中には、「男らしさ」「女らしさ」などの表現において、古いジェンダー観が描かれている作品が多くあります。しかし時代が進むにつれ、少しずつ絵本の世界にも「男の子」「女の子」の垣根を越えた「ジェンダーイクオリティ(平等性)」が感じられる作品も増えてきています。 そんな新しい感性が描かれた絵本を、絵本コーディネーターの東條知美さんにうかがいました。※前編<男らしさ、女らしさ…名作絵本に描かれた古いジェンダー観に「モヤッ」としたら、子どもにどう伝えればいい?>から続く

MENU 新しいジェンダー観が描かれた「おすすめ絵本6選」 絵本を通じて「大まかな価値観」を手渡す ジェンダーについて学ぶことは「命」を考えること

新しいジェンダー観が描かれた「おすすめ絵本6選」

1)『あのね あのね』 

 保育園のおむかえに来てくれた親の自転車に乗って、今日あったことをつたない言葉で、一生懸命伝えようとする絵本です。この時、自転車でお迎えに来ているのは「お父さん」。
 2018年に出版された絵本ということもあり、共働き家庭も増えた社会背景が自然に取り入れられています。

『あのね あのね』 えがしら みちこ/作(あかね書房)

2)『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』

 この絵本の主人公のモデルとなったのは、後に女性初の軍医として活躍し、フェミニストとして知られたメアリー・E・ウォーカー。約150年前、女の子がズボンをはいてはいけないという常識に抵抗したウォーカーの少女時代を、わかりやすく描いています。巻末には、当時の著者がズボンを履いている写真や、ウォーカーの半生の解説が書かれています。

『せかいでさいしょにズボンをはいた女の子』 作/ キース・ネグレー 訳/ 石井 睦美 (光村教育図書)

3)『ぼくのスカート』

 いつも、はだかん坊で元気いっぱいのフレッドが、ある日、お父さんとお母さんの部屋のクローゼットで見つけて着てみた服は、お母さんのスカートでした。そんなフレッドの姿を見た両親はにっこり。「子どもは、自分の着たい服を自分で選ぶ権利がある」という、シンプルな大切さを感じさせてくれる作品です。

『ぼくのスカート』 文・絵/ピーター・ブラウン 訳・監修/日高庸晴  (小学館)

4)『たかくとびたて女の子』

 女性の活躍推進というテーマを象徴するような絵本。パイロット、作家、バイオリニストを目指す3人の女の子が主人公のスペインの絵本です。夢を追いかける3人の前には「「ソレハムリ」「ガイケンビジン」など、彼女たちの「ヤルキ」を失わせる敵が登場します。「女の子には夢は叶えられない」というバイアスを払拭する少女たちの物語です。

『たかくとびたて女の子』 作/ラケル・ディアス 訳/星野由美 (汐文社)
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玉居子泰子
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