――子どもたちが自然と、ジェンダーの多様性について受け入れられるといいですね。
ええ。一方、私は男女共同参画の観点で、ジェンダーに関する講演を依頼されることがあるのですが、この時に、必ずセクシャルマイノリティの絵本を含めて紹介し、データにも触れます。
なぜかと言えば、20代から50代の世代の多くが、いわゆる「ジェンダー教育」を受けなかった世代だから。つまり、私たちの多くは、ジェンダー平等や性の多様性についてよく知らないということ。 知らないからこそ、子どもたちと一緒に知っていきましょうと呼びかけています。
ジェンダーについて学ぶことは「命」を考えること
――絵本を通してジェンダー教育を広めたいと願う東條さんの最大の目的は?
これまでの教育において、「ジェンダー」が取り上げられてこなかったために、 ほとんどの人がジェンダー平等について知らないまま過ごしているんですね。その結果として、ジェンダーや性的指向に関して、SNSで心ない言葉が飛び交ったり、変な噂話が立てられたりするのだと思うのです。
「どうして、性の話を子どものうちから知らなきゃいけないの?」と問われたら、それは命の問題だからです。
2022年に行われた認定NPO法人 ReBit(10代のセクシャルマイノリティの支援をする団体)の調査によると、10代のLGBTQの子供たちが前年一年間に、48.1%が自殺念慮、14.0%が自殺未遂、38.1%が自傷行為を経験したと回答しています。
今、結果については、国も非常に重く受け止めているようですが、つまり性の多様性への無理解は、命に直結する問題だということです。誰もが自分らしく生きたいと願っています。「男らしさ」「女らしさ」を押し付けるのではなく、「自分らしく」が大事だということを、私はいつも講演でお話ししています。
そんな時、今回ご紹介したような、エンパワーメントされる絵本を通じて、大人が子どもたちに「そのままのあなたが大切だよ」ということを、伝えてあげてほしいなと思っています。
かけがえのない存在であることを、信じさせてほしいのです。
(取材・文/玉居子泰子)