5)『しげるのかあちゃん』

 トラック運転手の豪快な「かあちゃん」を持つしげる。2トントラックを乗りまわし、犬小屋の修理から、近所のボヤの鎮火まで、なんでもできる頼もしいかあちゃんを、尊敬する男の子のお話。「とうちゃん」の存在はなく、どうやらシングルマザーでがんばる女性を描いています。

『しげるのかあちゃん』 作/城ノ内まつ子 絵/大畑いくの (岩崎書店) 

6)『わたしは反対! 社会をかえたアメリカ最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ』

 実際に、1933年にアメリカで二人目の女性最高裁判所判事として活躍したルース・ベイダー・ギンズバーグ氏をモデルにした伝記絵本。とても活発だった少女が、やがて判事となり、性差別の撤廃などを求める活動を行い、アメリカで最も尊敬される女性と言われるまで成長します。未就学児には少し難しい内容ですが、ジェンダーについて考えるとてもよい絵本です。

わたしは反対! 社会をかえたアメリカ最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ』 作/デビ―・リヴィ 絵/エリザベス・バドリー 訳/さくま ゆみこ (子どもの未来社)

絵本を通じて「大まかな価値観」を手渡す

――子どもたちがジェンダーについて考えられるおすすめの絵本を紹介してもらいました。こうした絵本を通して伝えられることは?

 私はジェンダーに関して、すべてのメッセージを絵本で伝えようと力まなくていいと思っています。絵本は真面目なテーマを題材にしていても、どこか「クスッ」と笑わせてくれるような表現もあって、楽しんで読むことができます。

 ですから、子どもたちが読んでいて、大人が伝えたいと思っている”大まかな価値観”を伝えられたらと思っているんです。

――大まかな価値観、ですか?

 たとえば、LGBTQについて描かれている絵本であっても、その本質についてわざわざ親が説明するのではなく、「スカートが好きな男のがいてもいいんだ」とか「お母さんが外で働いていて、お父さんが料理をしてくれる家もあるんだ」など、大らかな気持ちを手渡せたらいいと思うのです。絵本はそうした価値観を伝えるのに役立つのだと思っています。

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