夏真っ盛り。待ちに待ったお盆休みももうすぐですね!
今年からお目見えした今週木曜日の祝日「山の日」を過ぎ、週が明けるとお盆となりますが、これからの1週間は旅行に行ったり、里帰りをしてお墓参りに行ったり……と、今年のお盆をどのように過ごそうか、いろいろと準備を進めている方も大勢いらっしゃることでしょう。
── ところで、どうして8月のこの時期の連休のことを「お盆休み」というのでしょう?
今回は、お盆の由来やその時期など、日本人であっても意外と知らない「お盆」についてご説明します。

死者の魂を祀るイランのお祭りが、日本に伝わってお盆になったともいわれている
死者の魂を祀るイランのお祭りが、日本に伝わってお盆になったともいわれている
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お盆のはじまりは、イランのお祭りだった?

お盆は、先祖の霊を迎えて供養し、冥福を祈る行事ですが、その起源にはいくつかの説があります。
ひとつは、仏教の『仏説盂蘭盆経(ぶっせつうらぼんきょう)』という経典に由来していているという説です。
釈迦の弟子、目連尊者(もくれんそんじゃ)が、地獄に堕ちた母親を救い出すため、釈迦の教えに従い、夏にお供え物を用意して大勢の僧侶と経を唱え、死者を供養したという伝説をもとに書かれた経典です。
「盂蘭盆(うらぼん)」は、古代インドなどで使われていたサンスクリット語で、「逆さ吊り」を意味する「ウランバナ(ullambana)」という言葉が語源とされていて、経典では目連の母が、地獄で逆さ吊りにされている様子を表しています。
この「盂蘭盆」を省略して「盆」になったという説です。
ただ、現在ではこの『仏説盂蘭盆経』はインドから伝わった経典ではなく、5世紀から6世紀の初めに中国で作られた偽経(ぎきょう)ではないかと考えられています。
一方、お盆はイランから伝わった行事という説もあります。
「盂蘭盆」は、亡くなった人の魂を表す「ウラヴァン(urvan)」という、イラン民族・ソグド人の言葉に漢字を当てたもの、という説です。
死者の魂を祀るイランの行事では、人々は杜松(ねず)を燃やし、先祖の霊はその芳香をたよりに子孫の家に帰って来ると信じられていました。この行事が、中国に伝わって道教や仏教と結びつき、さらにそれが日本に伝わって祖霊信仰と融合し、先祖を祀る行事になったというのです。
このほか、お盆は日本固有の信仰に由来しているという説もあります。
盆(ぼん)というのは、食物を入れて神や死者の霊にお供えする容器のことで、そこから今に伝わるような、お盆の行事が生まれたという説です。

日本のお盆の歴史

仏教行事としてのお盆は、飛鳥時代に日本に伝わったといわれています。
606年には推古天皇が初めてのお盆の法要を執り行いました。
そして733年からは、聖武天皇が宮中での行事としてお盆を行うようになりました。
一般の人々の間では、古くから、秋の初めに先祖の霊を祀る行事が行われていました。
それが仏教と結びつき、現在のようなお盆として広く普及したのは、江戸時代のころと考えられています。
江戸幕府によって檀家制度が成立し、先祖を祀る仏教行事としてのお盆が広がりました。

実は、年に3回もあるお盆の時期

新暦のお盆(7月13日~16日):
7月15日を中日としたお盆です。7月13日に迎え火を焚いて先祖の霊を迎え、7月16日に送り火を焚いて送り出します。8月のお盆と区別して、7月盆と呼ばれることもあります。
月遅れ盆(8月13日~16日):
7月のお盆から、ひと月遅れで行われるお盆です。
明治維新後、日本の近代化を推し進めていた明治政府は、明治6年に、暦をそれまで用いていた太陽太陰暦から、西洋のカレンダーに合わせて太陽暦(グレゴリオ暦)に変更、明治5年12月3日を、明治6年1月1日としました。
暦がひと月近くも早まってしまったため、古くからの暦に合わせて働いていた農村の人々にとっては、新暦のお盆の時期が、農作業の繁忙期と重なってしまいました。そこで、お盆の時期をひと月遅らせて、8月に迎えることにしました。この月遅れ盆の時期の夏季休暇を、お盆休みといいます。
旧盆(旧暦の7月15日を中心に4日間):
新暦でも月遅れでもない、旧暦のお盆に当たる時期に迎えるお盆です。
その年によって新暦と旧暦の差は変化するため、お盆の時期も毎年変わります。2016年8月17日が旧盆の中日(7月15日にあたる、お盆の中心の日)となりますが、2017年には9月5日が中日となるように、ひと月以上遅れてお盆を迎える年もあります。
また、かつて養蚕が盛んだったところでは、やはり農閑期にあたる8月1日ごろにお盆を迎える地域もあります。
最後に、今のお盆は8月の暑い時期に迎えるものなので、夏という印象が強いですが、本来は秋の行事でした。各地の伝統や信仰と結びついて、変化を続けながら日本に伝わったお盆。でも一番大きな変化は、暦を変えてしまったことによるものかもしれませんね。
*参考
蒲池勢至著『お盆のはなし』法蔵館、岡田芳朗著『改定新版 旧暦読本』創元社、五十嵐謙吉著『歳時の文化事典』八坂書房、『現代こよみ読み解き事典』柏書房、『年中行事大辞典』吉川廣文館

盆明けの送り火
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