「ゴッドタン」などを手がけるプロデューサーの佐久間宣行さんと『地図と拳』で直木賞を受賞した作家の小川哲さんの豪華対談が実現。小川さんの近著『君のクイズ』の執筆裏話に始まり、佐久間さんのクイズ番組制作の苦労話に話は及んだ。
【写真】世界最古のクイズを出したのはギリシャ神話に出てくるこの怪物
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佐久間:『君のクイズ』(朝日新聞出版)、書き出しから面白くて、一晩で読み終えちゃいました。
小川:ありがとうございます。めちゃくちゃ嬉しい。目の前で自分の作品の話をされるのあんまり得意じゃないので恥ずかしいですけど(笑)。
佐久間:執筆のきっかけは何だったんですか。
小川:スポーツを小説にしたいってずっと思ってて。クイズを一種のスポーツとして捉えると、問題も解答も文字だし小説と相性がいいなと考えてたんです。一流のクイズプレーヤーが友達にいるし、これは書かない手はないなと。
佐久間:取りかかってみて、書けそうとか書けなさそうと思う瞬間ってあるんですか。
小川:『君のクイズ』に関して言うと、書けるか書けないかわからなかったです。ゼロ文字押し[編集部注 同作は、あるクイズプレーヤーが問題文を読まれる前に解答できたのはなぜか、という謎が次第に明らかになっていく構成]をどうやって解決しようとかっていうのがわからないまま、書き進めていきました。
佐久間:えっ、ゼロ文字押しの謎の答え、決めてなかったの?
小川:そうなんです。ゼロ文字押しは、クイズに興味ない人にとっても一番インパクトがある謎だろうと思って、とりあえず最初に設定したんです。もし答えが見つからなかったら、一文字ずつ増やしていこうと思ってました(笑)。
佐久間:おしりも浮かんでないままにいってみたんだ。
小川:このタイプの作品は普通浮かんでから書くんですけどね(笑)。でも、普段からプロットは作りこまないようにしてます。僕っていう凡人が考えた起承転結なので奇跡が起きないんですよね。小説って書いてると変な奴が出てきたり、最初はさくっと飛ばすはずだったところが結構面白くなってそこを膨らませたりっていうのがあって。それを全体の構造の中にうまくはめ込められると、初めは絶対に思いつかなかったようなオリジナリティーがある話ができるんです。この小説もゼロ文字押しの答えがわからずに書いたからこそ、小説として面白くなったと思います。