11月21日に運航を開始した「グランドリームエクスプレス広島号」=米倉昭仁撮影
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 東京をはじめ大都市で、夜行バスの利用者が増加している。背景には宿泊費の高騰もあるが、女性を中心に新しいニーズが立ち上がっているという。

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寝心地のよさがウリ

 午前7時、朝日がビルの谷間を照らすなか、東京駅のバスターミナルに次々と夜行バスが到着する。出発地は青森、新潟、大阪、徳島、山口――。

 11月21日から運行を開始したJRバス中国の「グランドリームエクスプレス広島号」も到着した。

 広島市の実家から帰ってきたという女性(32)は、「座席が広くて、仕切りのカーテンがしっかりしているので、過ごしやすかったです」。

 ワイシャツ姿で降車した男性会社員(50)は、「運賃は1万1500円。新幹線よりずっと安いし、よく眠れました」。

 新幹線の最終列車より遅い午後9時すぎに広島駅を出発し、始発より早く東京駅に到着する。運賃は利用日によって変動し、片道7400~1万9000円だ。グランドリームエクスプレス広島号は、旅客機のビジネスクラスと同様のゆったりした「クレイドルシート」を採用。リクライニングしたときの寝心地のよさがウリだ。

JRグループの高級夜行バス「グランドリーム」=西日本JRバス提供

ホテル代の高騰で宿代わり需要が増えた

 JRバス中国の担当者はこう話す。

「夜行バスの利用者は若年層が多いのですが、このバスは特注シートの採用で幅広い年齢層の乗車を想定しています。東京のホテル代はコロナ禍前の約1.5倍と高騰していて、宿代わりとしての需要も見込んでいます」

 夜行バス業界がコロナ禍で深刻な打撃を受けてから4年。日本最大級の高速バスターミナル「バスタ新宿」の2020年4月の利用客数は17~19年の平均値に対し1割以下まで減少したが、最近は8割台半ばまで回復した。

 夜行バス大手「ウィラー・エクスプレス」(東京都)の担当者は「宿泊料金の高騰により、今まで夜行バスを利用していなかったお客様の利用が増えています」と話す。

 今年10月、同社が利用客に対して行ったアンケート(回答数1820人)によると、宿泊料金の高さを理由に夜行バスを利用した人は約6割にのぼる。そのほか、「夜行バスを利用してもよい」理由は、「新幹線などと比べて安いから」が43%、「寝ながら移動できて、タイパがよいから」が21%、「現地での時間の融通が利くから」が20%だ。

「ウィラー・エクスプレス」の高級夜行バス「ReBorn」の車内=同社提供
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推し活に夜行バスは「好都合」