大野さんはこの翌月、総支部が「活動量不足」を理由に公認申請を見送ったことを不当とし、党本部の「ハラスメント防止対策委員会」に申告した。今年1月に調査結果がまとまり、結果を受けた党本部は「『妊娠出産による活動量不足は公認決定の際に含めない』との認識は共有されていた」とし、「ハラスメントにはあたらない」と結論づけた。
だが、たとえハラスメント認定に至らずとも、産後1年に満たない大野さんが「活動量不足」を指摘され、江戸時代の「お白州」のような場で男性党員から説明を求められていた状況に、党本部では誰ひとりとして違和感を抱かなかったのだろうか。
今年1月、党本部で会見に臨んだ岡田克也幹事長に筆者がそう問いかけると、岡田幹事長は淡々とこう述べた。「妊娠出産期間を除いて活動量不足を議論したと聞いている。妊娠出産を理由に公認を認めなかったのではなく、その意味ではハラスメントはなかったという結論だった。妥当と考える」
■「マタハラ」と受け取るのは一般的な感覚
「その意味では」とした理屈にも苦しいものがある。労働問題に詳しい長谷川悠美弁護士は指摘する。
「マタハラの多くは、妊娠出産とは言わずそれらしき理由をつけて雇い止めや降格などの不利益取り扱いをするものです。そのため厚生労働省は、妊娠出産から1年以内の不利益取り扱いは原則無効とする指針を出している。詰問は法律上の不利益取り扱いではないが、産後8カ月の段階で活動量について詰問された点を『マタハラ』と受け取るのは、一般的な感覚でしょう」
党は「妊娠出産期間は議論の対象から外したからセーフ」というが、そもそも妊娠や育児と無関係に働ける期間とそれ以外の期間との明確な切り分けなど、できるだろうか。こと社会通念から外れている政治の現場においては、なおさらのことだ。
長谷川弁護士も、「議論の対象から外した」という論点に違和感を覚えるという。
「一般論として、妊娠出産などを理由とする解雇などを裁判で争った場合、妊娠前の業務量などに問題がないのであれば『妊娠出産期間中を含めないと確認したから問題ない』という抽象的な話は、通るものではありません」