MCを務める番組を通し、さまざまなタレントの人生に触れた。やりたい仕事に自らアプローチをする姿を目にし、自分から動かなければ、と考えるようになった。AERA2024年9月23日号より。
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「まるで、架が事業で成功して、アエラの表紙に登場してくれたみたいだね」
カメラに向かう藤ヶ谷太輔の姿を見ながら、編集部のスタッフとそんな言葉を交わした。“架”とは、映画「傲慢と善良」で藤ヶ谷が演じた主人公、西澤架のこと。クラフトビール事業で勢いに乗る若き社長だ。
原作である、辻村深月の同名小説との出合いは偶然だった。同書が刊行された2019年、目当ての本を買おうと足を運んだ書店で不思議と惹きつけられ、手に取った。いわゆる“ジャケ買い”だった。
「衝撃的でした。辻村さんの作品すべてに言えることですが、幼少期に感じたことのある感情や過去に置いてきてしまった気持ちが言語化されていて、『なぜ僕のことをわかっているのだろう』『自分のために書いてくれたのかな』と思うほどでした。人間の裏側がえぐられる感じが緊張感を持って描かれていて、興奮のあまり顔をニヤニヤさせながら読んだことを覚えています」
映像化するなら、自分が架を演じたい。そう強く思うようになってから、書店に足を運ぶたび、いつ表紙に「実写化決定」の文字が現れるのか、気が気でなかった。他の人が演じたら「悔しい」と思うに違いない。そう考え、まずはチーフマネージャーを通し版権について調べ、原作関係者にアプローチを始めた。
「待ちの姿勢ではなく、『やりたい』という意思はスピーディーに形にしていきたい、と考えるようになっていました」
取材では、自身の変化について、そして何よりも大切だというKis-My-Ft2について、真摯に胸の内を明かした。
「あまり熱く語りすぎると、自分でハードルを上げることになりますね」
取材の終わりに、少し照れながらそう口にした藤ヶ谷は、誠実で、人間らしい魅力にあふれていた。(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2024年9月23日号