スーパーのセルフレジでバーコードを読みたがる6歳の息子に対し、父親が「周りの迷惑になるから」とやめさせたところ、妻に「社会勉強になるのに。子どもの気持ちをくんであげられないのか」と責められました。幼い子どものセルフレジ使用は社会勉強か、迷惑行為か。「論語パパ」こと中国文献学者の山口謠司先生が、「論語」から格言を選んで現代の親の疑問に答える本連載。今回の父親へのアドバイスはいかに。

*  *  *

【相談者:6歳の息子を持つ30代の父親】

 幼稚園年長の6歳の息子を持つ30代の父親です。子どものスーパーのセルフレジ使用について妻と意見が割れています。息子は乳児期から意欲的な性質で、スーパーにいくと必ずセルフレジのバーコードをスキャンしたがります。妻は「社会勉強になるし、やる気を伸ばしてあげなきゃ」と積極的にやらせるのですが、後に待つ人の列が長くなってイライラします。そもそもセルフレジは、客が有人レジに並ぶ手間を省いたり、店員のコストをカットしたりと、効率化のためにあるのに、ままごと感覚で子どもに使わせるなんて「迷惑行為」だと思います。妻になんて言えば納得してやめてもらえますか。

【論語パパが選んだ言葉は?】

・「子曰(しいわ)く、祝鮀(しゅくだ)の佞有(ねいあ)りて、而(しか)も宋朝の美有らずば、難(かた)いかな、今の世に免(まぬが)るること」(雍也第六)

【現代語訳】

・孔子先生はおっしゃった。「宋朝ほどの美貌だけ持っていても、祝鮀のような雄弁の才がないと、今の世の中の恐ろしさを免れ、生き抜くのは難しい」(雍也第六)

※祝鮀…衛の君主・霊公に仕えた祭祀の官。雄弁家。 宋朝…宋の政治を支えた公子朝。色男で有名。

*  *  *

【回答】

 お答えします! 相談者さんの妻の言う通り、小さい時から柔軟にセルフレジを扱う練習をさせた方が、息子さんの教育につながると、私は思います。

 いずれ世の中はほとんどすべてのスーパーなどで、セルフレジか無人のレジになってしまうと予想されませんか? そんな時代になって、あわてて「なんだ、この無人レジは? 子どもが触ると人の迷惑になる。どうすればいいんだ?」なんて騒いでもどうしようもありません。

次のページへセルフレジが使えないと…
著者 開く閉じる
山口謠司
山口謠司

山口謠司(やまぐち・ようじ)/中国文献学者。平成国際大学新学部設置準備室学術顧問。大東文化大学名誉教授。1963年、長崎県生まれ。同大学大学院、英ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。NHK番組「チコちゃんに叱られる!」やラジオ番組での簡潔かつユーモラスな解説が人気を集める。2017年、著書『日本語を作った男 上田万年とその時代』で第29回和辻哲郎文化賞受賞。著書や監修に『眠れなくなるほど面白い 図解論語』(日本文芸社)など多数。2021年12月に監修を務めた『チコちゃんと学ぶ チコっと論語』(河出書房新社)が発売。ラジオパーソナリティ、イラストレーター、書家としても活動。フランス人の妻と、大学生の息子の3人家族。

1 2 3