氷山の一角 男性の被害も

 昨今は、女性が受けたセクハラ被害だけでなく、男性が受けたセクハラ被害も明るみ出てきており、社会の変革を感じています。でも、まだまだ氷山の一角で声を出せずにいる人も多いと思います。

 会社員として勤めている頃(今はセクハラが撲滅された、素晴らしい会社になっています)、中年の男性社員から下劣な行為を受けたことがありました。証人も多数おり、当然ですが私に落ち度がないことは証明できる環境でした。あまりに許せなくなり、その会社のセクハラ防止窓口に通報を考えました。しかし、同僚から、

「そんな通報をしたら、役職の低いあなたが不利益を被るよ。社会は厳しいんだ。絶対やめるべきだ……」

 という厳しい一言を受けました。私は、いろんなことを考えた上で、通報はやめました。でも、私の行為は本当に正しかったのかなと今も悩むことがあります。後進の女性にとって、本当にそれが良かったのかを感じるからです。

 他にも、独立したての頃に、ある企業の懇親会に招待された際に衝撃的なことがありました。その企業で、とても活躍している女性管理職が、二次会のカラオケボックスで男性若手社員に無理やりキスをしていたんですね。正直、気持ち悪かったです。その男性社員の名前も顔も思い出せないのですが、心当たりがある方は教えてほしいです。謝ります。見て見ぬ振りをして、ごめんなさい。

 ちなみに、その企業にはスーパービジネスマンということで、当時かなり有名だった男性も仕事をしていたのですが、ものすごいセクハラ魔で、その方も大暴れしており、私も酷い目に遭いました、なんで、告発しなかったのか……。バカですね。

 その後、その企業は上場したものの、ありえない赤字と人材離職が止まらずに、非上場化して社長も代わり、再生の途中でクリーンな企業になっています。先行研究の通り、セクハラ放置企業は様々な谷を迎えるのだなと感じています。

メディアも勇気を持つべき!?

 メディアにおいても、セクハラに関する話題はなかなか取り上げられないと思うことがあります。6年ほど前に、あるラジオ局のレギュラーをさせてもらっていました。当時、財務省の事務次官による、テレビ朝日社員に対するセクハラを週刊新潮が報道しました。テレビ朝日も記者会見を開くなど、大騒動になりました。当然、ラジオ番組で崔はどう思うかを聞かれました。

 セクハラがどうしたら消えるかの考察や、セクハラをされた側の気持ちにもっと寄り添ってほしい旨を伝えました。その後、当時のTwitter上では肯定的な意見だけでなく、個人攻撃をされているような不気味なコメントが多く寄せられました。地獄のような空間で、セクハラに関する発言は、こんなに大変なのかとも痛感しました。先日のNHK報道後の炎上を見ても、メディアの中の人も勇気を持って、そして私自身もエビデンスを武器に発信していく必要性を感じています。

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崔 真淑

崔 真淑

エコノミスト。2008年に神戸大学経済学部(計量経済学専攻)を卒業。16年に一橋大学大学院にてMBA in Financeを取得。18年より同大学の博士後期課程に在籍。研究分野はコーポレートファイナンス。新卒後に、「経済のスペシャリストの世界に触れたい」と、大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)に入社。アナリストとして資本市場分析に携わる。当時最年少の女性アナリストとして、NHKなどの主要メディアで経済解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験したのち、日本の経済リテラシー向上に貢献したいとの思いから2012年に独立。経済学を軸に、経済ニュース解説、経済・資本市場分析を得意とするエコノミスト・コンサルタントとして活動。

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