このとき、敗戦を受けて泉代表は、「責任は重く受け止める」としながらも辞任はしなかった。衆院選は政権をかける選挙だが、参院選はそうではないという理屈だろう。しかしそれでは民主党政権時の主要メンバーたちは収まらない。とりわけ自民党が「政治とカネ」問題で失墜している今は、政権奪取のチャンスでもある。にもかかわらず、「頼りない泉代表」に、将来の首相になるかもしれないポジションを渡すわけにはいかない――。

 菅直人第2次改造内閣の官房長官で、野田佳彦内閣では経済産業相を務めた枝野幸男前代表は代表選に意欲を見せ、党内の最大グループ「サンクチュアリ」に影響力を持つ赤松広隆前衆院副議長や小沢氏らと面会し、支持を求めている。

立憲民主党の政治塾で講演する枝野幸男・前代表

「馬場さん、玉木さんとやったことがパーになる」

 一方、泉代表は、連合の芳野友子会長や国民民主党の玉木雄一郎代表、そして日本維新の会の馬場伸幸代表、社民党の福島瑞穂党首らと次々に会談をこなし、国民民主党とは政策協議をすることで合意した。

 ここまでは「野党共闘」の模索だといえるだろう。だが泉代表は、さらに日本共産党(以下共産党)の田村智子委員長とも会談する予定だ。これを国民民主党の榛葉賀津也幹事長に「馬場さん、玉木さんと(会談を)やったことがパーになる」と牽制されると、泉代表は「玉木さんも志位(和夫、前共産党委員長)さんとピアノを弾いていた」と反論した。

 これこそ泉代表の「焦り」の象徴ではないか――。

 21年の衆院選で13議席を失った責任をとって枝野前代表が辞任した後、代表選で泉代表が選任されたのは、より現実性を求めて保守層にウイングを広げることを期待されてのはずだった。立憲民主党が自民党に代わって政権を取ろうというのなら、安全保障や原発政策で理想路線を堅持する共産党と組むのは現実的とはいえない。

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小沢氏の癇に障っている泉代表の行動とは