福岡県にある太宰府天満宮。年間約700万人もの観光客が訪れる人気スポットです。
その人気の秘密は、何といっても「学問の神様」と呼ばれる菅原道真が祀られていること。
受験をひかえた学生や家族が多く合格祈願に訪れます。
また、もう一つの魅力といえば、やはり「梅」でしょう。
敷地内には約200品種、6000本が立ち並ぶ日本有数の梅の名所として知られています。
間もなく見頃を迎える太宰府の梅ですが、そこには菅原道真にまつわる不思議な伝説が……。
── 知られざる、その伝説とは?
天才・道真が詠んだ梅の歌
平安時代を生きた菅原道真といえば、幼少期から類いまれな学問の才能を発揮したことで有名。
初めて和歌を詠んだのは、何とわずか5歳のとき。その後も勉学に励み、異例の早さで数々の要職に就きました。
讃岐国の長官としての実績が認められ、京都で政治の中心となる右大臣として活躍。
ところが、波乱は突然にやってきました。
左大臣・藤原時平による策略で罪に問われ、太宰府へ左遷となったのです。
あまりに理不尽で突然の出来事の中、道真が詠んだ歌がこちら。
〈東風吹かば 匂ひおこせる 梅の花 あるじなしとて 春な忘れそ〉
春が来たら、芳しい花を咲かせておくれ、梅の花よ。
主が太宰府に行ってしまったからといって春を忘れてはならぬように、との意味です。
なぜ、道真は苦しい状況の中、梅の歌を詠んだのでしょうか……?
主を追いかけた「飛梅伝説」
京都の自宅に梅の木を大事に植えていた道真。
歌にもあるように梅を愛でる気持ちはさぞかし強かったことでしょう。
そんな道真の気持ちを知ってか、言い伝えられているのが、太宰府天満宮の「飛梅伝説」です。
本殿の右側にある梅は「飛梅」といわれていますが、この梅は道真を慕って一夜のうちに京都から太宰府まで飛んできたという伝説が残されているのです。
実際、この梅の正体については諸説あり、定かではありません。
道真の家来が京都から株分けした苗木を持ってきた、道真が京都の桜を思いながら梅を植えたなど……。いずれにしても、道真の梅への思いの強さがうかがいしれますね。
名物・梅ヶ枝餅のルーツは道真を救ったおばあさん
太宰府の名物として人気の和菓子「梅ヶ枝餅」。
実は梅は入っていません。では、なぜ「梅ヶ枝餅」というのでしょうか?
この梅ヶ枝餅のルーツも道真と深いかかわりがあったのです。
── 太宰府に流された道真ですが、その後も不自由な暮らしを強いられました。ある日、刺客に襲われ、必死の思いで逃げ込んだのが、とある麹屋でした。麹屋を営むおばあさんもまた、自分の身の危険をかえりみず、道真をかくまいました。それからも、おばあさんは道真を思いやり、お世話を続けます。そんなときに差し入れで届けていたのが、麹の飯を梅の枝に添えたもの──。
これが梅ヶ枝餅のルーツです。梅が入っていないけれど、梅ヶ枝餅という名がついたのは、おばあさんと道真の信頼関係から生まれたものだったのです。
今年は暖冬の影響で梅の見頃も早まる様子。
道真の思いがつまった飛梅の鮮やかな姿を見に、ぜひ太宰府へ足を運んでみてはいかがでしょうか?