「環境で人は変わっていけると思います」と廣津留さん(撮影/吉松伸太郎)

Q. 会社で人材開発を担当しています。これまでの日本の教育では、決められたことをきちんとこなすことは評価されるものの、主体性があまり育まれないきらいがあると思います。新卒の社員の主体性を引き出すには、どのような取り組みがあればいいでしょうか。

A. 主体性を発揮した人をきちんと認めて評価する環境づくりが大事なのではないでしょうか。一概には言えませんが、私の感覚としては、今の若い世代は器用に生きることを求めるというか、無駄な波風は立てたくないし、報われないことはやりたくないと思う人が多い気がします。彼らが主体的に仕事に取り組むには、それだけの労力をかける「理由」が必要です。

 それには模範を見せることがいちばん効果的なのでは? 自ら提案した企画を実現できるなど、楽しそうな様子で主体的に仕事に取り組み、結果も残している先輩たちの姿を目にすれば、自分たちも同じように取り組んでいこうという気持ちになるはずです。上司に言われたことだけをやるイエスマンばかりが出世する環境だったら、主体性は育まれないですよね。

 以前、ニューヨークを拠点とするオーケストラ「The Knights(ザ・ナイツ)」のリハーサルに参加したとき、その風通しの良さにびっくりしました。一般的なオーケストラのリハーサルでは、指揮者とコンサートマスターぐらいしか意見を交わさないことが多いですが、ザ・ナイツは前列から後列まで誰でも意見を言っていいという環境なんです。それがこのオケでは「ふつう」なので、私も意見を言っていいし、逆に何か言うべきだとも思ったんですよね。最初こそ衝撃を受けましたけど、私もだんだんと慣れて「ここはこう弾いてもいいんじゃないですか?」など、自分の意見を伝えるのが当たり前になっていきました。環境で人は変われるんだなあと。これも、それぞれの意見に耳を傾けてくれるオープンマインドな仲間たちがいたからこそなんですよね。それくらい環境づくりって大事で、少しずつでも人を変えていける大きな力があると思います。

構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS

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