「それらの権利は住民自治を進めるために行使されるものなのに、自分は選挙で選ばれているから何をしてもいいと思い違いをするような首長が現れている。人口減少社会で地域の衰退が懸念されるなか、一丸となって地域の経営を行わなきゃいけないときに首長のハラスメントによって職員の人たちが苦しみを抱えたり、意欲を失ったりすれば、それはそのまま市民サービスの低下につながるわけです」
性被害者を責める傾向
だが、現行法でもやれることはある。前出の内藤さんによると、まずは各地方公共団体が、男女雇用機会均等法及び労働施策総合推進法でそれぞれうたわれる「ハラスメント指針」に義務づけられた措置を履行し、それを労働組合、議会、市民団体等が監視・指摘することだ。
「そして、その履行を所管官庁である総務省が監督することです。こうすることで問題を起こす首長がきても一定程度はコントロールが可能と思います」
沖縄県南城市民の関心は高まっている。古謝市長のセクハラ疑惑が報じられると、原告女性を支えようと市民が集って話し合うようになった。そのひとり、佐多美知子さんはこれを機に、かつて保育園の民営化問題などに向き合った仲間と「ハートのまち南城 人権ファーストの会」を2月に立ち上げた。3月には百条委員会と第三者委員会の設置を求める要望書を市議会に提出。会員は85人に達した。
「でも、どちらもいまだに設けられていません。これを私たちはほっといていいの?という声が高まっている。裁判までしてセクハラを訴えている女性の勇気をつぶすわけにはいきません」
一方で、市民のなかには、原告女性や、彼女を支えようとする市議までも、実名で攻撃する人もいる。それについて内藤さんは、首長だから支援するというよりもセクハラで訴える人を非難する傾向が強いと見ている。
「日本は特に性被害者やその人を支援する人を責める傾向にあります。無論多くの人がそうであるかはまた別で、SNSではそういった意見が増幅される傾向はあると思います」
(ジャーナリスト・島沢優子)
※AERA 2024年6月3日号より抜粋