パワハラなどが町の第三者委員会に認定され、5月に辞職した愛知県東郷町の井俣憲治町長=2024年4月25日撮影
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 地方自治体の首長のハラスメントが続いている。背景には自治体ならではの構造や法的な問題が横たわる。AERA 2024年6月3日号より。

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 地方自治体で首長のハラスメントが続いている。2月には福岡県宮若市の塩川秀敏市長(75)の市職員に暴言を繰り返すなどのハラスメント行為を市公平委員会が認定。3月には岐阜県岐南町の小島英雄町長(74)が女性の町職員の尻を触る、背後から抱きつくなど99件のセクハラ行為を第三者委員会から認定され辞職した。4月には岐阜県池田町の岡崎和夫町長(76)が、5月には愛知県東郷町の井俣憲治町長(57)が、ハラスメント行為を認定され、辞職した。沖縄県南城市でも、古謝景春(こじゃ・けいしゅん)市長(69)からセクハラ被害を受けたとして、市長用公用車の運転手だった女性が、市長と市に計約400万円の損害賠償を求める訴訟を起こしている。

女性職員らへのセクハラが認定され、4月に辞職した岐阜県池田町の岡崎和夫町長=2024年4月25日撮影
女性の町職員の尻を触る、背後から抱きつくなど99件のセクハラ行為を第三者委員会から認定され、3月に辞職した岐阜県岐南町の小島英雄町長=2024年3月5日撮影

 社会問題化する首長によるハラスメント。背景には何があるのか。労働法などに詳しい労働政策研究・研修機構副主任研究員の内藤忍さんは「首長から職員へのハラスメントは大きな問題が二つ認められる」と話す。ひとつは、対策を講じる立場の首長側が行為をしているが故に解決が難しいという構図だ。近年、ハラスメント防止条例を独自に制定する自治体も増えているが、ほとんどの場合、首長はあくまでもハラスメント案件かを判断し処分する側としてしか明記されていない。加害側に回る可能性が想定されていないわけだ。もうひとつは法的な問題だ。地方公務員は、改正労働施策総合推進法において都道府県労働局による「紛争解決援助及び調停に関する規定」が適用されない。内藤さんは言う。

「ハラスメント禁止法や包括的差別禁止法の中で民間・公務問わず行政救済を受けられるようにすることが必要だと考えます」

 地方自治論を研究する大正大学地域創生学部教授の江藤俊昭さんは「今、企業、教育機関、自治体と、どこでもハラスメントが起きています。特に地方自治体の場合は構造上そういった問題が生じる可能性が高い」と話す。なぜならば、職員の配置や採用等を決める人事任命権は首長に専属しているからだ。

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