『「不安症」でもだいじょうぶ ―不安にならない、なくすという目標は間違いです』原井宏明,松浦文香 さくら舎

 人間、生きていれば誰しも多かれ少なかれ不安を感じることはあるもの。けれど、まだ起きていないことに対して次々と不安が生じるようになり、仕事や家事にも支障が出るほどになれば、それは「不安症(不安障害)」という心の病気に陥っているかもしれません。

 2002年~2006年度、厚生労働省によっておこなわれた疫学調査によると、一生のうちに1回でも不安症群になる確率は9.2%と報告されているそうです。私たちの10人に1人がなると考えると、いつ自分に起きてもおかしくない、わりと身近な状態だと言えますね。そんな不安症のメカニズムの解説とともに、自分でできる対処法などについても記されているのが、精神科専門医の原井宏明氏による『「不安症」でもだいじょうぶ ―不安にならない、なくすという目標は間違いです』。

 「不安症」とひとくちに言っても、さまざまな種類に分けられます。突然、不安に襲われてパニック発作を繰り返す「パニック症」、あらゆることに漠然とした不安を感じる「全般不安症」、対人場面で緊張してしまい人前に出ることを避けるようになる「社交不安症」、病気に対して過剰に不安になる「病気不安症」などなど......。いずれにせよ、不安や心配と呼ばれる状態は学術的には弱い恐怖反応だと定義されており、不安の正体について著者は「身の危険を感じ、興奮している状態」(同書より)だと記しています。

 では、どうすればこうした不安感を自分の中から消し去ることができるのでしょうか? 実は不安をなくそうとするのは間違いで、「行動を変えることで不安を手なずける」というのが著者の目指す考えです。

 同書では、自分の気分や行動を記録することで自分の生活を客観視する「セルフモニタリング」、不安をあおる行動を別の行動に置き換える代替方法、あえて嫌なことをやって不安に対する耐性をつける「エクスポージャー」などが紹介されています。精神科やメンタルクリニックで薬物を用いる治療もありますが、「不安は強いけど病院に行くほどではない」という方は、まずは同書に書かれた方法を試してみてはいかがでしょうか。当人でなく家族に不安を訴えている人がいるという方にとっても、どのように付き合っていけばよいかを知ることができ、参考になることでしょう。

 不安の原因を探したり不安をなくそうと躍起になったりしても、逆にまだ起きてもいないことがどんどんと事実に思えてきて、さらなる不安に陥ることも多いものです。「不安」という見えない敵と戦うのではなく、「不安とうまくやっていける自分になる」こと。その方法を知りたい人にとって、同書はたいへん有意義な一冊と言えます。

[文・鷺ノ宮やよい]