さらには、ゴールドは腐食しにくく、鉄などと違い1000年前のものもそのまま取り出すことが可能であり、その不変性も人間を魅了する理由でしょう。なので、昔から政治リスクや地政学リスクなど貨幣価値を揺るがす現象に備えるために、資産構成の数%から10%ほどはゴールドを持つことが推奨されることがありました(もちろん、どのような資産構成にするかは、各人のライフスタイル、リスクの取り方で変わります)。実際、世界各国の中央銀行の保有資産を見てみると、必ずと言っていいほどゴールドを保有しており、最近では米ドルの保有額を減らしてゴールドの比率を高める中央銀行も増えています。
世界のルールの変化
なぜ、ここ数年でゴールド価格が急騰しているのでしょうか? 理由は大きく3つ挙げられます。1つ目は、そもそも円安で円の価値が下落しているので、円とゴールドの交換レートに影響しているということです。ゴールドは、基本は米ドルで取引されているので、円安ドル高から影響を多く受けています。2つ目は、東欧や中東での戦争により、世界で一番決済手段として用いられている米ドル以外も持ちたいと考える投資家が増えつつあることです。よく、有事のゴールド買いと言いますが、戦争で米国経済への影響を危惧する動きが出ると、ゴールド人気が出やすくなります。3つ目は、約80年間続いた世界のルールの変化を見越した動きが出ているからと言われています。戦後から、世界はアメリカ一極集中で、アメリカが世界警察のような動きをしてきました。それに伴い、米ドルは世界通貨として成長してきました。しかし、中国が力を持つことで世界が多極化する可能性が高まり、中東や中南米では米ドル離れを模索し始めており、中国人民元での決済を認める資源国も登場してきました。さらには、中国とロシアの中央銀行がこうした動きを見越してか、自国の信用力を高めるためにゴールドを大量に購入し、ゴールド価格を押し上げるような動きをしています。