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 かつての終身雇用のイメージをもつ世代からすると、「転職」や「退職」は人生の一大事。でも、厚生労働省の調査によると、被雇用者の離職率はここ15年ほどは15%前後で推移していて、転職も退職もそれほど珍しいことではなくなっている。

 離職理由は自己都合が76.6%と最も多く、その内訳(複数回答)を見てみると「労働条件がよくなかったから」28.2%、「満足のいく仕事内容でなかったから」26.0%などが上位を占め、より満足度の高い仕事を求めて転職を考える人が増えていることがわかる。

 次のステップで力を発揮するためにも、よい辞め方を心がけたい。この記事では、発売されたばかりの『今さら聞けない 転職・退職の超基本』(ハッカズーク監修)を引用しつつ、「よい辞め方」「よい送り出し方」について考えたい。

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 退職したからといって、その職場とつながりがまったくなくなると思うのは間違いだ。転職先の業界が同じかどうかにかかわらず、前の職場の人と仕事でかかわる可能性は十分ある。去る側も送り出す側も、お互いに気持ちよくありたいものだ。

 退職後も以前の職場の人と良好な関係を維持していると、お互いの仕事に役立つ情報交換ができたり、再雇用のチャンスが生まれたり、その後のキャリアにとってもメリットが大きい。転職を考えるなら、退職の際の心得を知っておきたい。

 民間の人材サービス会社の調査結果からは、「辞め方」がその後の人間関係に影響することが見えてくる。良い辞め方をした人とは、91.6%が辞めた後も交流があると回答したのに対して、不快な辞め方をした人との交流は36%にとどまる。退職者を送り出す側の意見として、不快な辞め方の代表例は「引継ぎが不十分・なかった」。理由をきちんと説明し、丁寧な引継ぎができる十分な時間的余裕をもって退職の意思を伝えることが肝心だ。

 具体的にはどのようなことに注意すべきなのか。

 転職経験者を対象にした調査によると、円満退職に必要な要素の1位は「早めに伝える」、2位は「日ごろの人間関係」、3位は「納得できる退職理由を用意」、4位は「しっかり引継ぎする」、5位は「会社の不満や愚痴を言わない」となっている。どれも至極まっとうなことばかり。日ごろから上司や同僚とコミュニケーションをしっかりとって信頼関係を築くことや、誠意をもって対応することが大切だということがわかる。

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退職者こそ「即戦力」