AERA 2024年3月18日号より

 バイデン氏も負けてはいない。トランプ氏を攻撃し、とっちめる、つまり伝統的な政治家らしくない戦法を取る準備があるという。ネットメディアAxiosによると、側近の話としてバイデン氏は現職大統領らしく紳士的なアプローチでは、トランプ氏が日々繰り出す嵐のようなライバル批判には対抗できないと理解したという。経済政策などよりもまずは積極的な「トランプ批判」に転じ、81歳という高齢を懸念する有権者の気をそらす戦略だ。

 選挙陣営の資金もバイデン氏が5600万ドルなのに対し、トランプ氏は3千万ドルと差をつけている。トランプ氏は、複数の裁判闘争のための弁護士費用の負担も抱える。大統領選は、大量のテレビCMや大規模な選挙集会などで、現金があるかどうかの体力勝負でもある。

ケフィエまとう若者

 しかし、バイデン選挙陣営には、二つの大きな壁がある。イスラエルとハマスの戦争と、米国内に流入し続ける移民の激増だ。

 特に、バイデン政権が続けるイスラエル支援は、パレスチナのガザに対するイスラエルの一方的な攻撃を「ジェノサイド(大量殺戮)」ととらえる多くの若い人の反感、いや嫌悪感すら買っている。

「バイデン、バイデン、何してる? 子どもたちを殺すのに手を貸している!」

 3月2日、ニューヨークの学生街で開かれた親パレスチナ派の学生集会。激しい雨を突いて、2時間ちかく参加者が声を張り上げている。公立校生徒が主導した集会には約2千人が集結し、イスラエルのガザ攻撃を「ジェノサイド」として非難。イスラエルに決然とした態度を示さないバイデン政権に対しても矛先を向けた。

「今世界でイスラエルとハマスの戦争を止められるのは、バイデンしかいない。でも、彼の動きはものすごくスローで、何もしていないに等しい。彼の側近が考えていることもわからない。イスラエル人人質を解放するのに、殺人を続けていいわけがない。失望した。選挙で彼に投票するか今は分からない」

 と、大学生のマリーアさん(20)。パレスチナの旗の色をあしらったスカーフ「ケフィエ」を肩にまとう。

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