Aさんは、人事異動の作業を「キャンプ」と呼んでいた。
そして、上納された現金は教職員課だけでなく、指導部指導室にも流れていたことが市教委でも確認されているという。
「指導室も校長や教頭の人事評価をする部署なので権限が大きい。市役所の他の部署だってみんな忙しい。なぜ、教育委員会だけに陣中見舞いが必要なのか変だとは思ったが、そんなことを口にしたら左遷されてしまう。情けない話だが、私は教務主任、教頭、校長と3回、推薦状をもらっている。9万円を渡してカネと引き換えに校長になったと思われても仕方ない」(Aさん)
校長や教育委員会を経験した複数の人によると、小中学校の教諭の任意団体は、教科別や卒業した大学別、校長や教頭経験者らの会など様々なものがある。特に名古屋市の各区で計16ある「校長会」と、教員を多数送り出している愛知教育大のOB会が有力な組織だったという。
市教委の記者会見によれば、
「額は年間200万円ほど。パソコンで出入金を管理していた」
「金品は教職員課や銀行口座で保管していた。人事の繁忙期に菓子や栄養ドリンクの差し入れに使ったり、教員採用試験後の飲み会などの費用に充てたりしていた」
などと現金の受け渡しを認めている。そして、
「(金品が)人事の評価には影響していない」
とも説明している。
だが、河村市長はAERA dot.の取材に、
「校長などになるための上納金ですよ、これは。推薦状がないと教務主任、教頭、校長にはなれんのです。年間200万円と教育委員会は言っているが、その程度で収まるのだろうか。人事は基本的に教職員課に権限が集中しており、職務権限は十分にあると考えている。また指導室も人事にはそれなりのものがあり、現金が流れていた。これは、贈収賄事件にもなりかねない。地方公務員法、倫理規程にも反している。まさに“教育とカネ”の問題だ。名古屋市議、愛知県議、国会議員までもが恩恵を受けていたとも聞いている。“政治とカネ”の問題にまで発展しかねない」
と話す。