安井ファームのブロッコリー(写真:安井ファーム提供)

「生のブロッコリー」は敬遠されがち

 安井ファームがブロッコリー栽培を始めたのは03年。米どころである加賀地方の農家ということでもともとは米作りに励んでいたが、米を収穫した後の田んぼでも育てられる野菜としてブロッコリーに目をつけた。高い需要に後押しされ、近隣農家の田んぼを借りるなど畑を拡大し続けており、「今はブロッコリー農家と言っても過言ではないです」(土田さん)。

 農畜産業振興機構の担当者によると、ブロッコリーは水田転作にも向いている野菜だという。生産調整下で供給が飽和している米よりも野菜のほうが“もうかる”ため、米作り→野菜作りへのシフトを推進する自治体は多く、裏作や転作に適したブロッコリーの生産量は順調に増えてきた。

 しかし、ブロッコリー農家が直面している“課題”もある。共働き世帯の増加といった社会の変化によって、手間と時間のかからない料理がもてはやされ、包丁を使ってさばいたり、下ゆでしたりといった工程が必要な”生のブロッコリー”は敬遠されるようになったのだ。

 結果、スーパーの野菜売り場に並ぶホールのブロッコリーよりも、冷凍やカット処理された加工ブロッコリーのニーズが高まっているが、この状況は多くの農家にとって喜ばしいものではない。

「生鮮野菜として市場に時価で卸す場合、良いタイミングにあたれば高単価で買い取ってもらえます。一方で加工用ブロッコリーは、買い取り価格が一定でギャンブル性はないものの、単価が低めに設定されているので、卸したがる農家が少ないんです」(同機構担当者)

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競合はメキシコやエクアドル