「いかにも回復してきたかのように見えるが、前年のハードルが下がっているだけで、実質的にはマイナスだ」(日本マクドナルド社員)
消費期限切れの中国産チキンを販売した騒動から1年がたった8月12日、日本マクドナルドホールディングスは2015年1~6月期の決算を発表した。
最終損益は前期18億円の黒字から一転して262億円の赤字で、01年の上場以来最大の赤字幅となった。
足元では、単月の既存店売上高を見てみると、前年同月比で12.6%減だった7月を底に、8月に入ってから2週間が経過した時点では100%超で推移しているもようだ。1~6月は20%以上の落ち込みが続いていただけに、一見すると回復の兆しが出てきたかに思える。
しかし、である。「チキン問題が発覚する以前の13年と比較してみると7月は30%近い落ち込み。8月だって昨年は25%落ちたから、本来25%戻さなければならない」(マクドナルド関係者)のだ。
さらに、いちよし経済研究所の鮫島誠一郎主席研究員の試算によれば、マクドナルドの業績が最も好調だった10年を100とした場合、15年4~6月の既存店売上高は65~70%という水準だ。
10年当時の損益分岐点は80%弱であったと想定されるから、大幅な赤字に終わるのも無理のない話といえる。
●新商品も不発続き
40円で追加できるトマトのトッピングやベジタブルチキンバーガーなど、満を持して展開を始めたメニューがあまり売れない──。業績改善の鍵を握るのは、「魅力的なメニューに尽きる」(サラ・カサノバ社長)と、マクドナルドはこの春から相次ぎ野菜メニューを拡充している。
「健康志向のニーズに応えて、選択肢を増やす」として、セットメニューにサラダを加えたほか、トッピングメニューを用意したり、ベジタブルチキンバーガーなどの新商品も発売したりした。
ところが、こうした施策はあまり成果が出ていない。「好調なのは、8月に期間限定で発売したアボカドメニューだけ。それ以外の売り上げはいまいち」(現場の社員)という。
「新商品全ては当たらない。幾つかヒットさせて定着すれば業績も安定するだろう」(外食関係者)と楽観的な声もあるが、炭酸ドリンク全品100円などキャンペーンを打ち「薄利多売で凌いでいる」(同)ため客単価は低水準のまま。さらに客数についても戻りが鈍いとあってはいかにも厳しい。
イメージチェンジの要になる店舗改装も、「オーナーとの交渉に時間がかかっている」として、遅々として進んでいない。
施策が奏功しているとは言い難く、依然としてマクドナルドの前途は多難だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)