そんな彼の格好は、洗練された小ぎれいな感じはないが、味や雰囲気がある。髪にはパーマがかかり、左耳にはフェンディのピアス、デニムのシャツにジーパン。だが足元を見ると、なぜか黒の便所サンダル……現代のバンカラは、げたではなく、便所サンダルなのか。
「げたは先輩からもらったのがあるんですけど、特別な時だけに履いてます。基本は一年中、便所サンダルです。マキシマム ザ ホルモン(バンドグループ)が好きで、ギターの人が便所サンダルを履いているんですよ。それをリスペクトして履いてます。履いてみると楽だし、格好いいし、最高ですよ」
豪胆なエピソードもある。昨年の「早稲田祭」(大学の学園祭)では、開催の半年前に早稲田アリーナでの3千人規模のイベントが急きょ無くなるというアクシンデトがあった。実行委員からそれを聞いた石橋さんは「じゃあ、ウチでやる」と1人でイベントを請け負ってしまったのだ。「ウチ」とは石橋さんが所属していた広告研究会。当時、石橋さんはサークルの代表を務めていた。
アーティストのギャラや会場費、設営費などでおよそ300万円かかることを幹部たちに伝えると、当然ながら、「なんで勝手に決めたんだ」「失敗して、赤字が出たらどうする」などと激怒された。だが石橋さんは「赤字が出たら俺が払う」とたんかを切って応戦。最終的に、赤字が出たらサークルと同期の3年生(当時)で折半することなり、イベントは了承された。
その後は、サークルメンバーの協力を得ながら、人気ロックバンド「go!go!vanillas」を呼ぶことに成功。チケット3千枚も完売することができたという。
「赤字になったら自分で責任を取らないといけないなと思っていました。親に借金しようかとも思いましたが、いきなり親に頼るとか言ったら格好悪いなとか、いろいろと考えていましたね。ただ、最終的には大盛況で、500万円くらい稼ぐことができました。全額サークルの利益です」
と胸を張った。だが直後に、金額については「……500万はちょっと盛ったかもしれません」と照れながら訂正した。こうしたまっすぐなところもバンカラ気質と言えるかもしれない。