現在、女性向け雑誌『BE・LOVE』に連載中の漫画『放課後カルテ』は、小学校の「校医」を主人公に"スクール医療"を描く意欲作。大学病院から、小学校の保健室に赴任してきた小児科医の牧野は、無愛想で口も悪く、子どもに好かれる素質ゼロ。しかし、持ち前の鋭い観察眼でいち早く症状に気づき、子ども達はもちろん、ときには教師や保護者の病気にまで早期介入し、治療へ導きます。
ナルコレプシー(睡眠障害)や拒食症など、さまざまな病気を取り上げてきた同作ですが、8巻からは、作者の日生マユ(ひなせ・まゆ)さんが「連載開始時から いつかやりたかった題材」(8巻あとがきより)と述べる「場面緘黙(ばめんかんもく)」の少女が登場します。
この「場面緘黙」とは、家では普通に話せるのに、学校などの社会的状況、特定の"場面"では「話せない」状態が、1カ月以上の長期にわたって続く症状で、200人に1人の割合で存在すると言われています。
米国精神医学会の診断基準(DSM-5/精神疾患の分類と診断の手引)では不安障害のカテゴリーに分類されていますが、自閉症スペクトラムなどの発達障害、あるいは吃音(きつおん)症など、言葉の発達も関わっているケースも少なくありません。
子ども本人だけでなく、母親や周囲の大人の心理も丹念に描き、多くの読者から支持されている同作。実は日生さん自身、場面緘黙ではなかったものの、他人の視線に恐怖を感じ、学校で話すのが苦手な子どもでした。あとがきでは自身の学校時代を振り返り、「真愛を描いているときは 昔の自分を思い出していました 緘黙症じゃなくても 真愛のような苦しさを『想像』することはできるんじゃないか そう思いながら真愛を描いていました」(8巻あとがきより)と打ち明けています。
先月、7月13日発売のシリーズ最新刊9巻では、ついに場面緘黙編が完結。家では元気に話せるのに、学校では話せない1年生の真愛(まい)ちゃんに、牧野がとった支援とは? 気になる方はぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
さて、そんな場面緘黙をめぐる人々が一堂に会すイベント「かんもくフォーラム」が、8月1日と2日に開催されます。今回が初開催となる同フォーラムでは、場面緘黙の当事者・保護者はもちろんのこと、場面緘黙の支援に取り組む「信州かんもく相談室」代表で、長野大学社会福祉学部博士(教育学)・臨床発達心理士の高木潤野さん、「かんもくネット」代表で臨床心理士の角田圭子さんなど、さまざまな支援者・専門家が参加し、それぞれの立場や世代を超えて集い、"ゆるやか"につながる空間を目指しているのだとか。
今回のフォーラムに限らず、ここ数年で場面緘黙の新たな支援団体や交流グループが続々と誕生しています。関東や関西をはじめ、北海道、上田(長野県)、富山、松江(島根県)、沖縄、宮古島など、各地で活動が始まっているようです。少しずつ産声を上げ始めたこうした動きは、場面緘黙の理解向上への、大きな一歩となることでしょう。
【関連リンク】
「かんもくフォーラム」
http://kanmokuforum.wix.com/2015