つい最近まで、お店やバーでお会いすることもしばしばあった。その度に「万由子さん相変わらずお元気そうね」と声をかけていただいていた。

 家族を含め、私は篠山さんに何枚の写真を撮っていただいたことか。その1枚1枚に沢山の記憶が収められている。

 篠山さんはカメラを構える度に、「美しい!」「素敵!」と少年のように被写体に夢中になっておられた。篠山さんの腕にかかれば、人でも建物でも街でも、光が降り注いだように瞬時に被写体が輝き出す。こんなカメラマンは、篠山さん以外にいらっしゃらないでしょう。

 今日は私の誕生日。朝一番に飛び込んで来たニュースがあまりにも悲しくて、しばらく動けませんでした。こうして篠山さんとの思い出を文章にしながら、今頃「あら、万由子さんおめでとう」と顔をくしゃくしゃにして笑っているのではないかと、ふと空を眺めたりして……

「この写真すごくいい!」と伝えると「万由子さんに褒めてもらって嬉しい!」と無邪気に喜ぶ篠山さんの姿が忘れられません。

 篠山紀信はこれからも歴史に刻まれて生き続けます。

 残してくれた作品は永遠に続きます。

 たくさんの素敵な時間、素敵な作品をありがとうございました。

 大好きな篠山さん、ご冥福をお祈りいたします。

暮らしとモノ班 for promotion
節電×暖房どれがいい?電気代を安く抑えて温めるコツ