新しいNISA(少額投資非課税制度。以下、新NISA)が2024年1月から始まる。「eMAXIS」シリーズの生みの親が語る新NISA対象の投資信託で一番やってはならないことは──。AERA 2023年12月4日号より。
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投資信託の中で最大規模なのは「eMAXIS Slim」シリーズだ。「全世界株式(オール・カントリー)」の純資産総額は1兆6864億円(23年11月17日現在/以下同)、「米国株式(S&P500)」は2兆9114億円。このお化けファンドの生みの親、三菱UFJアセットマネジメント常務取締役の代田(しろた)秀雄さんに取材がかなった。
「ビールや牛乳など普段の買い物では定番商品を選ぶ人が多いものです。個人の資産運用においても定番商品となる投資信託を作りたいと考えました」
まず09年10月に「eMAXIS」シリーズが設定された。
「『eMAXIS』は数多くの金融機関で取り扱っていただけるようになりました。ただ対面販売のケースも増え、紙の目論見書(パンフレット)などを発行する必要が生じました。こうした書類の作成・印刷コストは軽視できない負担となります」
コスト負担が増すと低コストの維持が難しくなる。そこでペーパーレスのネット販売に限定し、種類を絞り、業界最安水準のコストを実現したのが17年2月登場の「eMAXIS Slim」というわけだ。
eMAXIS Slimは、後から安い競合商品が出ると、信託報酬を同率まで引き下げてきた。記憶に新しいのは今年7月。野村アセットが「はじめてのNISA・全世界株式」を信託報酬0.05775%で出してきた時、「eMAXIS Slim 全世界株式」は0.1133%だった。半額近いコストの競合商品。追従すれば、三菱UFJアセットが得る利益もほぼ半減することになる。「eMAXIS Slim 全世界株式、0.05775%に引き下げ」となったのは9月8日と、いつもより遅かった。
「引き下げを検討する際、当社は超長期で考えます。数十年でどれぐらい残高が伸びれば、健全に運用していけるのか。eMAXIS Slimのスケールメリットを生かした新たなコスト調整を実現できないか──」
だから時間がかかった、と。