行動力があったり、人と違うアイデアがひらめいたり。発達障害の特性が仕事にプラスに働くことがある。それなのに、同じ特性が結婚や出産後に「障害」になって苦しむ女性もいる。朝日新聞くらし報道部の取材を通して分かったのは、当事者たちはライフステージによって期待される「女性の役目」と特性の間で悩んでいるということ。記事をまとめた新著『発達「障害」でなくなる日』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し、発達障害の1つ注意欠如・多動症(ADHD)の女性の苦悩を紹介する。1回目は大卒後、営業社員としてバリバリ働いていた女性の話。結婚し、息子の障害の発覚から自らもADHD(注意欠如・多動症)と診断された。
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自分の障害は墓場まで持って行く
何があっても、子どもたちとは離れたくなかった。家族の形を壊したくない。だから、自分の障害は墓場まで持って行くことにした。
薬は夫に見せないように飲み、通院の際は「息子の障害の関係で助言をもらう」と言い訳する。そんな秘密を抱えた生活が苦しく、うつ病の一歩手前のような状態になった。
たまたま市の広報で「うつ病の対処講座」が目にとまり、参加してみた。
講師はADHDにも詳しかった。講座の後、思わず講師に駆けよって相談し、ADHDの人向けのワークショップを紹介された。
同じ特性に悩む人たちとの会話は「あるある」ばかりで居心地がよかった。