実は、医薬品の供給不足は、日本だけでなく世界共通で起きている問題でもある。ただし、先の日本医師会の会見では、日本のように大規模かつ長期間にわたって供給不足が続いている国はないと強調。背景には、医薬品の製造能力の低さや医薬品流通のサプライチェーンの弱さも起因しているとする。
「加えて厚労省をはじめとした規制当局に、もっと柔軟性や判断の迅速さが必要」とするのが、前出の坂巻教授だ。
「メーカーの増産体制も必要ですが、まずは不祥事の解消が最優先だと考えます。不足の根本原因である、品質・製造トラブル解決の道筋を、厚労省も速やかに示すべき。また、製造方法を変更する承認方法一つとっても、日本は世界に比べてかなり厳しく時間がかかる。健康への影響度を考えながら、より簡便な承認や報告の仕組みの整備、安定供給のための法律の整備・支援体制も必要では」
今年のインフルエンザは過去10年で最速の広がりをみせ、冬場の大流行も予想される。薬が枯渇する今、個人レベルの備えとしても、予防による一層の注意が必要だ。(ライター・松岡かすみ)
※AERA 2023年11月13日号より抜粋