日医工が作成した医薬品の供給状況が記されたリスト。「供給停止」や「限定出荷」の文字が並ぶ。新型コロナと不祥事の時期とが、思いがけず重なった影響も大きい(撮影/松岡かすみ)

解消には約2年かかる

 注文がさばき切れない背景には、ジェネリック医薬品の「少量多品種」という特徴もある。どのラインでどの薬をどれだけ作るか、長期的なスケジュールが決まっていることから、特定の薬が不足しているからといって、その薬だけの生産量をいきなり増やすのが難しい。

「加えて、国の主導でジェネリック医薬品市場が急拡大する中で、製造キャパシティーが追いついていない現状もあります。大手医薬品メーカーを中心に、増産体制を整えようとはしているものの、人材確保の問題などもあり、すぐに安定的な供給体制を作るのは難しい。こうしたことから、供給体制の面で薬不足の解消には2年くらいかかるのではないかと予測されています」(坂巻教授)

 業界関係者からは、医療費の増加を抑えるため、21年度から毎年実施されるようになった「薬価(薬の公定価格)改定」が、薬の供給不足の要因になっているとする向きもある。薬価は国が決めるもので、ジェネリック医薬品が最初に市場に出る時には、先発薬の5割の価格で出される。しかし実際には市場で購入される値段に合わせて、毎年薬価が引き下げられており、採算の取れない、いわゆる赤字品目が増えている実態もある。

安定供給には課題山積

 無論、メーカーが品質管理の責任を果たすのは大前提で、薬価の引き下げと不祥事とを直接的にひもづけて議論はできない。ただ、薬価引き下げのしわ寄せによって、メーカーがあらゆる面でコストをかけられなくなっているのは事実だ。日本薬剤師会元常務理事の藤原英憲さん(つちばし薬局代表)は言う。

「現在の薬価制度が見直されないと、医薬品業界全体が危機的な状態になるのは目に見えています。今、医療費削減の重荷が薬価に集中していますが、適正化できる部分は他にもある。医療費削減のための方法を、一過性の政策ではなく、抜本的に考え直さなくてはいけない局面に来ている」

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