(c)もつお/KADOKAWA 『高校生のわたしが精神科病院に入り自分のなかの神様とさよならするまで』から
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“神様”の命令に従っていたら、摂食障害強迫性障害で精神科病棟に入院することになった──。病気の受容と回復に至るまでの道のりを描いた漫画が注目を集めている。漫画家のもつおさんが、神様との出会いや当時の心境を語った。AERA 2023年10月23日号より。

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「このベンチを触れば、明日のテストは最下位じゃないかもしれない──」

 部活に習い事、塾。青春真っただ中にいた“わたし”が、“神様”と出会ったのは、高校1年生のある夜、塾からの帰り道だった。

「テストの成績は悪く、部活のギターの練習もできていない。終電も逃してしまった。すべてに努力し、充実しているけれど疲れていて、そんな時、ふと駅のベンチに目が留まったんです」

 そのとき、唐突に聞こえてきたのが「触れば悪いことが起きない」という“声”だった。

「自分の意思とは関係なく、脳に響いてきた。次第に声は大きくなり、気づくとベンチを触っていました。すると声はやみ、気持ちがすっきりしました」

 以後、不安を感じると「○○を触れば悪いことが起きない」という声が聞こえるようになった。触ると不安がなくなり、テストの成績が良くなったり、友人関係がうまくいったりした。

「偶然かもしれませんが、声の言うとおりにすれば願いが叶う。“成功体験”が重なるうち、私を救ってくれる“神様”と呼ぶようになったんです」

 神様。現在、漫画家として活動するもつおさん(26)は、強迫性障害と摂食障害で精神科病棟へ入院することになるきっかけになった声をそう表現した。

「病気になった当時のことは、すごく鮮明に覚えています」

 もつおさんは自身と家族の経験を漫画にした。『高校生のわたしが精神科病院に入り自分のなかの神様とさよならするまで』『高校生の娘が精神科病院に入りバラバラになった家族が再び出発するまで』には、病気の受容と回復に至るまでの道のりが、ほのぼのとした絵柄で克明に描かれている。

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