
セ・リーグで優勝し、クライマックスシリーズ(CS)出場を決めた阪神。元阪神のエース・能見篤史さんと共に阪神の今シーズンの戦い方を振り返り、強さの秘訣を紐解いた。AERA2023年10月23日号より。
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今年の岡田彰布監督率いる岡田阪神は守備位置も固定した。昨年は四つのポジションを守った4番大山悠輔が、今年は一塁手に専念。ファインプレーで何度もチームを救った。チームの失策数こそ昨年と同じリーグワーストだったが、得点にからむ手痛いエラーは少なかった。併殺数はリーグトップの130個だ。
「岡田監督に驚かされたのは、ほぼ2年間ショートのレギュラーだった2番中野拓夢をセカンドにコンバートしたことです。セカンドは一塁までの距離がショートより短く、『余裕をもってプレーできるようになった』と本人も語っています。8番木浪聖也との二遊間コンビが守りを安定させました」
岡田監督にとって最大の誤算が、抑えを任せた湯浅京己の故障離脱だったかもしれない。その湯浅に代わって4月からストッパーとして活躍し、セーブ王に輝いたのが岩崎優だ。「鉄仮面」と評されるほどマウンド上で冷静かつ淡々と投げ込んだ。

「私も抑えを経験していますが、勝っている場面で登板して抑えて当たり前、打たれれば敗戦の責めを負わなければならない。藤川球児は『そんなに大変じゃないですよ』と言いますが、メチャクチャ大変です(笑)」
岩崎はいわゆる「球もちのいい」投手だが、150キロ超の直球も抜群の変化球もない。それでも、能見さんの評価は高い。
「歴代のクローザーを観察し、しっかり学んでいます。ホームを踏ませなければいい、この打順ならこの打者と勝負しなくていいと歩かせたりもする。相手の代打や代走なども頭に入れ、打者のタイミングを上手く外す技術とクレバーさがありますね」
MVPは3年目の村上
先発陣では、エースの青柳晃洋や西勇輝などが前半は不調だった。一方、伊藤将司とソフトバンクから移籍した大竹耕太郎の両左腕、3年目にして覚醒した若き右腕、村上頌樹の“10勝トリオ”が優勝の原動力だった。