一方、異常に小さい袋……袋がどこにも見つからなかったのだろう。どっから持って来た?と言いたくなるようなヨレヨレの何回も使い回されたようなコンビニ袋。「これで入りますか?」とAD。見た目、絶対入らない。そういうときに限ってお弁当が津多屋だったりする(サイズが大きめ)。

私「これしかありませんかね?」

AD「そーですねー(早く仕事に戻らせろや)」

私「(悪かったよ)ま、やってやれないことはないかもしれませんね……すいません、お手数おかけしました」

AD「そうすか! おつかれしたっ!!」

 走り去るAD。小さい袋とふたりぼっちになってしまった。弁当を袋にもぐり込ませて、斜めにしたり、浮かせてみたり、試行錯誤してるうちに「勘弁してください!!!! そんなの無理ですってっ!!! 見りゃわかるでしょ!! 痛たたたたたたっ!!!」と悲鳴を上げ始めた(袋が)。破れてしまったら元も子もない。優しく優しく袋に収めようとする。持ち手でぶら下げると弁当箱が縦になる。ダメだろ、これ。仕方ない。ただ単に弁当に袋がまとわりついているくらいの状態で、手で弁当箱を掴む。片手が完全にふさがっている。左手でキャリーを引き、右手で弁当を掴む。駅までの道を歩いていると、どういうわけか雨が降ってくる。最悪だ。

 毎回こういうハメになるわけじゃないが、「お弁当を持って帰る用」の袋の有無で、一日を気持ちよく終えられるかどうかが決まってくることもある。くれぐれも用心したい。

 ちなみに最近私は「お弁当を持って帰る用」のエコバッグを持参することにしている。ただここのところの現場はみなスタッフさんが行き届いていて、まだそれを使う機会に恵まれず。ちょっと残念だが、私のカバンにはエコバッグが入ってるんだぞと思いつつ、現場に行くときの心の余裕はまさにプライスレスなのだ。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!

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