落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「お弁当」。
「『お弁当を持って帰る用』の袋ありますか?」。今まで楽屋からの帰り際に何回口にしてきたセリフだろう。
落語会や演芸会のスタッフさんは「はい! ちょっとお待ちください」と気軽に応じてくれることが多い。それ用の見栄えとサイズ感のよい紙袋が事前に支度してあったり、たとえポリ袋でも楽屋弁当がすっぽりと収まる大きめのモノを調達してきてくれたりする。
落語家はほぼ25%が楽屋で出された弁当をその場で消費し、出番前はモノを食べない人も多いので残りの75%は自宅へ持って帰る(私調べ)。持って帰って遅めの晩酌の肴にする。もしくは翌朝の朝食のオカズにする(同じく私調べ、というか我が家の常識)。
これが時折、テレビの仕事終わりに「お弁当を持って帰りたい」と言うと「は?」なんて気の抜けた返事をされて戸惑うことがある。
AD「は? 袋?」
私「いや、お弁当を持って帰りたいんです」
AD「……あー、お召し上がりにならなかったなら、そのまま置いといて頂いてけっこうですよ」
私「いやいや、持って帰るので……(うちで食べちゃ悪いかよ?)」
AD「お荷物でしょうから」
私「違うんです。うちで食べようかなと(何度も言わせんなよ)」
AD「あー、そうですか(めんどくせぇな)……袋ですか……ちょっと探してきますね(あー、めんどくせぇ)……」