――仲が良ければいいってわけではないんですね。
そうですね。僕はアーティストに直接頼まれても「うん、いいよ!とは返すけど、まずはスタッフに言ってね」と伝えます。その上でスタッフが「林に頼もう」と思ってくれるなら、喜んで引き受けますよ。
作家活動50周年記念コンサートは奇跡
――作曲活動50年を迎えました。
決して順風満帆な時期ばかりではありませんでした。月並みですが、長いような短いような50年だった。結果として振り返ったら、公式で1500~2000曲、非公式なものを含めれば6000~7000曲くらい書いてきて、今も書きたくて書き続けています。正直、ここまでやってこられたんだから、いつピリオドを打ってもいい心境です。ここに至るまでに、たくさんの方たちが僕の作品に携わってくれました。その方たちの協力がなければ、僕の作品はリスナーにまで届かなかった。改めて感謝に堪えないです。そして、自分を表す代表作がいくつかあることは作曲家として本当に幸せなことであり、50年作曲してきた結果でもありますから胸を張っていいのかなとも思っています。
――11月には、作曲活動50周年記念「ザ・シティ・ポップ・クロニクル 林哲司の世界inコンサート」が開催されます。
80年代にリアルタイムで聞いてきた方たちは、イントロが流れた瞬間から、その時代に戻れるのではないでしょうか。また、多くのアーティストの方たちがゲスト出演し、一緒にステージにあがるのは僕も初めての試みなので非常に楽しみです。僕のライフワークである「Song File Live」(2018年から始まった林哲司の名曲を届けるライブ活動。パフォーマーとしても舞台に立っている)とは一線を画していて、作品が主体で、次から次へとアーティストが曲を歌ってくれる趣向のコンサートです。これだけのアーティストが集まって、林哲司の作品を披露してくれるなんて奇跡的です。これが最初で最後……かもしれません。純粋に曲を、アーティストの目の前で、堪能してほしいです。
(構成 編集部・工藤早春)
※AERAオンライン限定記事