ただあまり褒めると、このコラムを万が一読まれた時に照れ臭いので、とりあえず橋本の中身がオジサンだから、ということにしておきましょう。

 そして敬愛する先輩俳優、沢村一樹さん。

 実は本人には言ってないんですが、僕はこの人の芝居が大好きなんです。今回の撮影でこんなことがありました。

 会議のシーン。一樹さんはテストで「少し、これだと強すぎるかな」と言って、違う芝居を試しました。

 微妙な違いではあるんですが、会議には上司や偉い人も同席している設定なので、少しだけ押しが弱い感じの芝居を試したんです。

 僕はそれを見て、「ああ、やっぱり素晴らしい俳優だな」と改めて思いました。一樹さんは、台詞の言い方や言い回しではなく、芝居の「性根」を変えていたからです(性根が変われば、当然ですが言い方や言い回しも自ずと変わってきます)。

 ちょっとこれ以上踏み込むと、どんどん演技論みたいになっちゃいますし、結局一樹さんは上記の芝居を試したあと、「(自分が演じる役にしたら)ちょっと今のだと弱いか」と言って元に戻したんですが、その先輩のトライ&エラーを眺めながら、一樹さんの素晴らしさを改めて再確認した次第。

 橋本と一樹さんは過去に何度もご一緒してるんですが、松本まりかさん、JPさん、前田拳太郎さんとは初共演(JPは以前、「99人の壁」に出て頂きました)。初めましての方々のお芝居を間近で見れるのも、今回の大きな楽しみの1つです。

 そして何度かは共演したことのある、徳重聡さん、鶴見辰吾さん。こんなにコミカルな徳重さん、こんなに弱々しく情けない鶴見さんも、なかなか他では見れないかもしれないと思い、とてもワクワクしながらお二人の芝居を拝見しています。

 他にも魅力的な俳優がたくさん。僕もみんなに負けないように食らいついていきたいと思います。

「トクメイ!警視庁特別会計係」は10月16日の月曜日よる10時スタート。賑々しく、ご期待を乞います。

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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