中学生の頃から自作の曲を路上で歌ってきたシンガー・ソングライターの幾田りらさん。映画「アナログ」のインスパイアソング「With」の制作秘話を語った。AERA 2023年10月2日号の記事より。
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――ビートたけし初の恋愛小説を原作とした映画「アナログ」。喫茶店で出会い、連絡先を交換しないまま毎週木曜に同じ場所で会う約束をした悟(二宮和也)とみゆき(波瑠)。二人に訪れる喜びと奇跡、愛の原点を描いた恋愛映画だ。
幾田りらは、そのインスパイアソング「With」を書き下ろした。ピアノとストリングスをベースに、幾田の伸びやかで透明感のある歌声が美しいアンサンブルを奏でるラブソングになっている。
幾田りら(以下、幾田):明け方近くに観させていただいたのですが、私、感動のあまり大号泣してしまって……(笑)。そのままピアノの前に座って曲づくりに入ったんですけど、主人公の悟とヒロインのみゆきのことを思い浮かべたときに、「空から降ってくるような音」がまずほしいなと思いました。それで曲の始まりは、言葉でも楽器の音でもなくて、すっと心に入ってくるハミングのような歌声で始まるようにしたんです。メロディーラインは、2人の愛の形がとてもピュアだったので、賛美歌のように神聖なものにしたいと考えました。
歌詞のひと言目には「奇跡のような 運命のような」という言葉が出てきますが、これはメロディーといっしょに自然に降りてきました。作品を観たときに、「人と人との絆とか、愛って何なんだろう?」って自分なりに考えてみたんです。それで思ったのが、人との出会いは「奇跡」でもあり、選択の結果としての「定め」でもあるんじゃないかなということでした。