人生で初めて大人から明確な敵意を向けられたことは、小さな彼女にとって大きなトラウマとなった。
その他にも、人間関係での小さなつまずきが絶えなかった。例えば、先生や周囲の友達が間違った意味で言葉を使うたびに、良かれと思ってそれを訂正していた。「自分が知っているなら、正確なことを相手に伝えないといけない」という、感情よりも合理性を尊重する気質ゆえの行動だった。
「周りの人に愛されたい」という気持ちをもっていたMIOさん。それとは裏腹に、軋轢を生むことも多かった。
「普通の子どもだったら、一生懸命やっていれば誰かが『子どもらしさ』として愛してくれるのかもしれないけれど、私はそうはならない。大人の間違いを訂正したり、時には論破までしてしまっていたからです。もちろん『打ち負かしてやろう』などという悪意はなく、良いことをしようと思っていたのですが、子どもらしくはないから、ますます愛してもらえませんでした」
周囲よりできるのに愛されない。かと思えば、自分が得意ではない音楽の担当の先生からはかわいがられた。良い成績を出している私よりも、悪い成績を出している私のほうが大人は好きなのかな……そう思うような経験を重ねるうちに、MIOさんは「人間という存在」を学ぶために、映画をたくさん見るようになった。