インタビューに応じる松永拓也さん。「ネットの誹謗中傷対策は、あらゆる側面からやっていく必要がある」「誹謗中傷のない社会になってほしい」と話す(撮影/倉田貴志)
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 ネットには誹謗中傷の言葉があふれている。池袋暴走事故で妻子を失くした遺族も誹謗中傷の被害に遭ったという。なぜ、ネット社会で誹謗中傷が起きるのか。AERA 2023年9月18日号より。

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 言葉の刃(やいば)は人を傷つける。重く、鋭く、心をえぐる。

「何より、妻と娘のことをモノみたいに言われるのが、本当に言葉にできないほどつらいものでした」

 松永拓也さん(37)は静かに話す。

 2019年4月、松永さんの妻・真菜さん(当時31)と長女・莉子ちゃん(当時3)が、車の暴走事故で亡くなった。

 事故の後、松永さんは、2人の命を無駄にしないという思いからX(旧ツイッター)やブログで交通事故撲滅の活動を始めた。すると、さまざまな意見が寄せられるようになった。

 大半が励ましのコメントだったが、中には、〈死ね〉〈消えろ〉〈悲劇のヒーロー気取りか〉といった誹謗中傷のコメントもあった。ありもしないことも書かれつらかったが、名前と顔を出して発言する以上、仕方がないとあきらめていた。

 しかし昨年3月、愛知県内の20代の男が、松永さんのXのアカウントに返信する形で、次のように書き込んだ。

〈男は新しい女作ってやり直せばいいこと

 お荷モツの子どもも居なくなった〉

 これを目にした時、松永さんは「泣きました」と振り返る。

「莉子が生まれた時に感じた命の尊さ、3年間一緒に真菜と莉子と生きてきた幸せな日々。それを、会ったこともない人が『お荷物』だと。そんなことを言うのかと。人として、絶対に言ってはいけないこと。許せなかった」

 松永さんは警察に被害届を出した。警察は被害届を受理し、男を侮辱容疑で書類送検して起訴した。男は、松永さんを中傷する意図はなく炎上商法のつもりだったなどと言った。だが今年1月、男は侮辱罪に問われ、求刑通り拘留29日が言い渡された。

 ネットには誹謗中傷や差別の言葉があふれている。

 7月12日、タレントのryuchellさんが、自ら死を選び27歳で亡くなった。明確な動機は明らかになっていないが、ryuchellさんは、SNS上の自身への執拗な誹謗中傷のコメントに悩まされていたという。

 昨年8月、ryuchellさんは離婚して「新しい家族の形」として同居を続けると、直後からryuchellさんへの厳しい批判の声が上がった。〈育児を放棄している〉〈妻子を差し置いて好きなことをやっている〉──。そんな投稿があふれ、「いいね」や「リツイート」で批判の声が膨れ上がった。

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