AERA 2023年9月11日号より

もっといい人いるはず

 これまでアプリで出会い、交際した人も数人いるが、まだ結婚には至っていない。女性は、

「ネガティブチェックするクセがついてしまって。年齢を重ね、選ばれにくくなっていることを実感しているのに、最近もLINEの絵文字の使い方が、女子高生みたいで気に入らなくて、連絡を取るのをやめてしまった」と話す。スマホの画面の向こう側に、もっといい人がいるはずだ、と期待して、今日もアプリにログインするのだという。

 そんな独身者を多く見てきた世代・トレンド評論家の牛窪恵さんは、「行動経済学の原理でも、選択肢が多いと人は迷います」とした上で、こう断言する。

「いまや婚活している男性の多くは、女性にも一定の経済力を求め、一方の女性は男性に家事・育児能力を求める時代です。ところが、目の前の相手には従来の『恋愛力』を求めてしまうから、うまくいかない」

 恋愛力とは例えば、「壁ドン」やエスコートができるバイタリティーや、「趣味は料理です」とほほ笑むしぐさなどのことだ。

 牛窪さんは、近く発表する著書『恋愛結婚の終焉』の中で、「恋愛と結婚を切り離し、結婚相手に『恋愛力』を求めることをやめよう」と説く。

「『草食系(男子)』の存在に気づいたのは15年以上前で、その世代がいま30代後半。その後、恋愛を面倒だと感じる若者にも数多く取材しました。奨学金の返済に追われるなど、恋愛する余裕のない人も多い。だからこそ、恋愛ではなく、結婚に必要な条件だけに集中することが重要です」

 婚姻率の上昇は、その先だ。(編集部・古田真梨子)

AERA 2023年9月11日号より抜粋

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