春の花として、誰もが知っているチューリップ。ルックスや名前からしても日本の花ではなさそう・・・ ところが富山では県花として掲げており、砺波(となみ)ではチューリップフェアが毎年開催されています。砺波には花びらや球根が入ったお菓子もあるのだとか。新鮮な海の幸や、立山連峰のイメージが強い富山県。この地とチューリップとの結びつきに迫ります。
この記事の写真をすべて見る自家受粉できないチューリップ
チューリップの花は開花から3日ほどは「おしべ」から花粉があふれだしそうになっていますが、「めしべ」は未熟なまま。「おしべ」がしおれたころ、ようやく「めしべ」が成熟します。「めしべ」と「おしべ」で時差があるのは、同じ花の中での自家受粉をふせぐため。他の花との間で受粉することで、強い次世代が残そうとしているんですね。
野生のチューリップが自生する地域では、花から花へと花粉を運んでくれる昆虫がいます。でも、日本ではチューリップの時期にはまだ殆どの昆虫が活動していないため、人間の手で花粉をめしべに移すしかないのです。受粉させてタネができても、地面に落ちたチューリップのタネは腐ってしまいます。チューリップの原産国では、夏場はほとんど雨が降らない乾季なのですが、日本では湿度が高いからです。
日本でタネを作るのは「品種改良」のため。育てて花を楽しむには、球根を植えます。富山県は球根の出荷量が日本一。隣の新潟県と合わせると全国の出荷量の98%を占めます(農林水産省:作物統計調査)。
チューリップのふるさと vs 富山 -気候の比較-
「チューリップは、もともとは、どこの国の花だと思いますか?」
20~40代の女性10人に質問してみました。結果は「オランダ」7人、「スイス」2人、「ドイツ」1人。オランダを始めとして、ヨーロッパのイメージが強いようです。
実は、チューリップは中央アジア出身。そこからトルコ経由でヨーロッパに伝わったと考えられています。アフガニスタンやカザフスタンなどでは、今でもチューリップが多く自生しています。
富山県で初めて球根栽培を始めた砺波市と、アフガニスタンの首都カブールの気候を比べてみましょう。グラフは月別平均気温(℃)と月別平均降水量(mm)を示しています。降水量が多い砺波に対して、カブールでは乾季(6~10月)には殆ど雨が降りません。しかし、気温の変化はかなり良く似ています。
富山は水田が多いのですが、冬場は積雪があるため、水田の有効活用が難しかったのです。チューリップに適した気候を持っていた富山では、水田裏作のホープとして球根栽培が県全域に浸透しました。
ただ、降水量は富山の方が圧倒的に多いのが事実。球根を育てたまま土の中に置いておくと、夏場にカビが生えたり腐ったりしてしまいます。そこで、球根が育つと土を掘り起こして収穫。洗浄後、乾燥させ、温度や湿度が管理された倉庫で保管し、秋の出荷を待ちます。
「となみチューリップフェア」は国内最大級!開催は4月23日(木)~5月6日(水)。
富山のチューリップをタップリ楽しめるのが、「となみチューリップフェア」。今年は650品種・250万本も用意されているそうです。メイン会場となる「砺波チューリップ公園」へのアクセスは、JR砺波駅から徒歩15分。会場までのシャトルバス(無料)を利用すれば5分程度で到着です。北陸新幹線でお越しの際は、新高岡(しんたかおか)駅で「城端(じょうはな)線」に乗り換えて、砺波駅へ。
「チューリップパノラマテラス」は大花壇の迫力ある「地上絵」を見ることができる新しいスポット。池に浮かぶ「水上花壇」も珍しい試みです。ウォーキングがてら、1万5千本が咲く「チューリップの丘」に登ってみるのも気持ちが良さそうです。歩き疲れたら、チューリップの「寄せ植え体験」「花かごづくり」「花びら押し染め」など、体験コーナーはいかがでしょう?
「となみチューリップフェア」は、4月23日(木)~5月6日(水)の開催です。
開園時間は午前8時30分~午後5時30分(最終入園午後5時)。
入場料は高校生以上1,000円、小・中学生300円(団体・前売など、割引制度有)。
4月25日(土)・26日(日)のみ、W7系ミニ北陸新幹線が会場内を走ります。
5月5日(火)はこどもの日。中学生以下は入場無料です。
年齢、体力を問わず、誰もが楽しめるチューリップフェア。
ペット同伴での入場が出来ませんので、ご注意下さいね。
参考文献
小田英智 構成・文 / 松山史郎 写真 『チューリップ観察事典』 偕成社、2003
富山稔 『図説花たちのふるさと』 河出書房新社、 2000
チューリップ四季彩館公式ホームページ http://www.tulipfair.or.jp/