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 電車での移動中に短時間でおなかを満たしてくれる駅そば店。安定した味と財布にやさしい価格で安心できる存在だが、その駅そばに変化が起きている。AERA 2023年9月4日号より。

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 有名店は全国から一度は食したいと客足は絶えないが、駅そばをめぐる状況は芳しいものではない。

 駅そば界でも伝説の店の一つとされるのが北海道・音威子府駅の「常盤軒」だ。そばの実と甘皮を一緒に挽き打った黒いそばが有名で、最北の駅そばとして全国にファンがいた。しかし2021年2月に3代目店主だった西野守さんが亡くなり、閉店してしまった。黒いそばを提供していた畠山製麺も廃業したため、音威子府駅の「常盤軒」は姿を消してしまった。とはいえ、悲観することはない。良い変化も起こっている。

「かつてJR系の駅そば店があったのですが、閉店したところに、独立系の会社が駅そばを始めるケースが地方には見られるようになりました。その良い例が松本駅(長野県)にある駅そば『榑木川(くれきがわ)』です」(駅そば研究家の鈴木弘毅さん)

「駅そば榑木川」は松本市内にある手打ちそば店が出店したもので、石臼挽き八割の本格そばを提供している。駅そばとしてはやや価格が高いが、それ以上の価値がある。

「駅のある地の業者が駅そばを始めるのは、地域を知っているからこそ、その駅を利用する人のニーズがわかっているという利点があります。チェーン店系にはできないその地に特化した品ぞろえができるのです。この傾向は今後、地方では進んでいくでしょうね」と鈴木さん。駅そばは地方では個性がより出てきているとも分析する。

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