現在の「ゆびとま」には、学校ごとのコミュニティーが存在する。しかし、それは閉じた空間だ。SNSのように、そこから広がっていく可能性は低い。MixiなどのSNSが普及し、ネット上で同窓生や同級生をみつけることが簡単になった2005年頃には、「ゆびとま」は過去のサービスになっていたと言えるだろう。

 そして09年5月、「ゆびとま」は唐突に甚大なトラブルが発生したと告知し、サービスを停止させた。そのトラブルの内容は公表されていない。一説には、暴力団のフロント企業に乗っ取られ、最大350万人の個人情報が流出したとも言われている。登録したまま、忘れていたユーザーの個人情報が流れてしまった可能性があるのだ。

 サービス停止後、すぐに有志による「ゆびとま再建委員会」が結成され、09年6月に株式会社ゆびとまエンターテインメントが業務を引き継いだ。そして、2010年8月、正式にサービスが再開されている。現在は、ゆびとまホールディングス株式会社を経て、株式会社ケイ・プランニングが運営会社となっている。

 かつては筆者も登録し、なつかしい名前を発見して喜んだ記憶がある。だが、今の時代、同級生を見付けて同窓会をするという目的であれば、SNSの方が手っとり早い。それでも「ゆびとま」が甦ったのは、「ゆびとまで、なつかしい顔に再会できた」という思い出があるからかもしれない。そして、卒業後何年たっても忘れられない顔がある以上、「ゆびとま」のようなサービスは求められるのだろう。

(ライター・里田実彦)