USSボーフィン潜水艦博物館。米国潜水艦が撃沈、破壊した日本の艦船の数を日の丸や旭日旗で表示。この中に疎開船「対馬丸」も含まれている(撮影/高瀬毅)

 見過ごせないのは、ミズーリの位置。アリゾナからわずか300メートルの距離だ。ミズーリのガイドになって5年という70歳のナオキ(ガイド名)は、「アリゾナは戦争が始まったモニュメント。ここは戦争が終わったモニュメント。二つが向かい合って展示されているところに意味がある」と言う。

「アリゾナはお墓。ここは、勝ったぞ、という施設。娯楽なんです」

 日本の敗退を決めた場所は、米国にとっては勝利の場所。敗戦国の日本人が考える「場」と、彼らの受け止め方には天と地ほどの違いがある。

 ミズーリだけでなく、見ておかなければならないものがもう一つあった。ビジターセンター横の岸壁に係留されている潜水艦ボーフィン号だ。

 44年8月、沖縄から長崎に向け、多くの疎開児童を含む1788人を乗せた貨物船「対馬丸」が鹿児島県の悪石島近海で撃沈され、1484人が亡くなった。この「対馬丸」を撃沈したのがボーフィン号である。「パールハーバーの復讐者」と呼ばれ、艦橋部分には、同艦が撃沈した日本の艦船の数が日の丸で誇らしげに表示されている。ビジターセンター内には、USSボーフィン潜水艦博物館があり、ボーフィン号はもとより、他の潜水艦の戦果を示す日の丸が貼り付けられたペナントも展示してあった。一連の展示物から見えるのは、戦争の悲惨さより、武力への信奉である。パールハーバーは「戦争テーマパーク」なのだ。

議会休会を狙ったかの公表、被爆者や市民の疑念膨らむ

 一般的な観光ではわからないハワイに視点を据え、『観光コースでないハワイ』という本を書いたノンフィクションライターの高橋真樹は、「パールハーバーも含め、軍事と深く関わってきたのがハワイ。軍のことは、仲間という意識が強い」と言う。オアフ島は、島の面積の約4分の1が基地で占められ、基地による環境汚染も進んでいる。同書では、基地反対運動を率いるカイル・カジヒロが、パールハーバーについて次のように指摘している。

「ここは若い世代が『戦争の文化』を受け継ぐ役目を果たしている。こういうところで教育されると『自分たちを守るために軍隊は必要だ』と当然のように考えてしまうんだ」

 姉妹公園の協定書の中に、「若い世代向けの教育とカリキュラムの企画・設計を含む、教育手法、プログラム、および施設に関する経験の交換」とある。広島市国際化推進課課長の野坂正紀は、こう語る。

「お互いに歴史を学んで核兵器のない世界の未来を描くことができるような交流、企画を、若い世代をターゲットに、パールハーバー側と検討していきたい」

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