今大会、最も注目を集める強打者が登場する。大会第3日第1試合の花巻東(岩手)対宇部鴻城(山口)だ。
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大谷翔平(エンゼルス)や菊池雄星(ブルージェイズ)といったメジャーリーガーが輩出した東北屈指の強豪校・花巻東の佐々木麟太郎。高校通算140本塁打を誇る世代最強スラッガーだ。184センチ、113キロという堂々たる体格で、風を切り裂くようなスイングスピードは圧巻。球を捉えれば打球はあっという間にスタンドに届く。
懸念は抱える背中の痛みの具合だ。岩手大会では本調子とは程遠く、本塁打もゼロ。岩手大会準決勝以降、調子を取り戻してきたが、甲子園でその本領を発揮できるか。打線にスイッチを入れる存在の佐々木の〝完全復調〟が期待される。
一方で、対戦するどのチームも佐々木を最大級に警戒するはず。鍵となるのは後ろを打つ北條慎治と千葉柚樹だろう。ともにパンチ力のある打撃には定評があり、岩手大会では2人で14打点。甲子園でどれだけ走者をかえせるか。
投手陣のキーマンは小松龍一と葛西陸。3年生が大半を占めるチームで貴重な経験を積む2年生コンビだ。エースナンバーこそ3年生の北條が背負うが、岩手大会で最もイニングを投げたのは小松。決勝では初先発ながら、盛岡三を相手に17奪三振で完封と圧巻の投球を見せた。彼らが継投策を支えることができれば、勝利はぐっと近づく。
対する宇部鴻城は相手強力打線を「柔よく剛を制す」で抑えたいところだ。エースの浅田真樹は164センチのサイドスロー。沈む変化球など多彩な球種で打たせて取る軟投派だ。山口大会の準決勝、決勝を完投し、失点は1。浅田の〝ペース〟にはまればロースコアの接戦も考えられる。
相手にペースを握らせないためにも欲しいのは先制点。1番を打つ主将の大川快龍の働きも大事になる。山口大会では打率1割台と苦しんだものの、「大声野球」と全力疾走を伝統とするチームにあってそのリーダーシップは不可欠。大川が乗ってくればチーム全体に勢いがつくだろう。
地方大会でのチーム打率は、ともに全5試合で3割4分4厘と同じ数字。投手戦になるのか、はたまた打線活発な乱打戦となるのか。花巻東の大会ナンバーワン打者と宇部鴻城の軟投派エース。チームの要の活躍が勝敗を左右しそうだ。
(AERA編集部・秦正理)