東京・千代田区の千鳥ケ淵戦没者墓苑で5月にあった、第2次世界大戦での戦没者を慰霊する拝礼式。今年は秋篠宮ご夫妻ではなく、次女の佳子さまがお一人で参列した。華やかなイメージで注目される佳子さまだが、一方で最近は宮中祭祀や慰霊の行事へ参加する機会も増えてきており、国民の平和を祈る若い皇族としての存在感が高まってきている。
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静寂があたりを包むなか、コツ、コツと足音が響く。
千鳥ケ淵戦没者墓苑に到着した佳子さまは、戦没者遺族たちの視線が注がれるなか、納骨堂に歩を進め、深く頭を垂れて祈りを捧げた。
収集されたものの身元がわからず、遺族に引き渡すことのできない遺骨を納めているのが、千鳥ケ淵の戦没者墓苑だ。この日は硫黄島やロシアで見つかった235柱が、加藤勝信厚生労働相によって新たに納められた。遺骨は、計37万485柱にのぼる。
拝礼をした佳子さまは、静かに戦没者墓苑をあとにした。
■若い皇族へのバトン
これまで千鳥ケ淵戦没者墓苑での戦没者拝礼式は、秋篠宮ご夫妻が担ってきた。平成の終わりからは長女の眞子さんが務め、そして今回初めて佳子さまが参列した。
昭和天皇は陸海軍を統帥した「大元帥」であり、複雑な思いを整理できぬまま胸にしまう遺族もいる。参列した遺族の一人は言う。
「皇室に戦争責任がまったくないわけではないと思っている。思うことはあります。しかし、戦没者への祈りが若い皇族に受け継がれているのは重要なことで、大切にしてほしい」
祈りを捧げる佳子さまの姿を、遺族は見つめる。
千葉県遺族会副会長の川島義美さん(81)の父親は、ニューギニア島で亡くなった。川島さんは、初めて参列した佳子さまの姿を「ほほえましい」と表現し、若い世代に継承されることへの希望を感じた。
「若い世代に、戦争の事実を知ってもらい、伝え続けてほしい。佳子さまが、真摯(しんし)な姿勢で祈りを捧げる姿はうれしくもあり、戦没者の存在を受け継いでくれると思うと頼もしさを感じます」