※写真はイメージです。本文とは関係ありません
※写真はイメージです。本文とは関係ありません

 お子さんが生まれたとわびさんはおっしゃっていましたが、家族が増えるという幸せな出来事も、実は心に重圧を与えるものなんです。さらに異動による新しい仕事と労働環境の変化があった。そんな状態の時に、たまたま強烈なパワハラのストレスが加わって、心が悲鳴を上げてしまったのでしょうね。

わび:追い込まれすぎてしまっていて、別の上司に助けを求めたり、担当窓口に相談したりする気力もありませんでした。

■メンタルを指導する教官自身がうつになる

下園:私も在職中にうつになったことがあります。でも、言葉は変ですが、わびさんに比べると“恵まれた”うつでした。

 1996年に自衛隊初の心理幹部に就任してから、色々な場所に派遣されてカウンセリングをしたり、講演をしたり、最初の著書を執筆したり、家を建てたり、新しい車買ったりと、私も、多数のライフイベントが重なっていたんです。

 そんな折、アメリカで「9.11」テロが発生し、よりメンタルヘルスの重要性が認知されるようになりました。張り切った私はより精力的に仕事をしていたのですが、ある講演のときに急に吐き気がして話せなくなって講演を中止して、そのまま倒れてしまったんです。

わび:それは大変ですね。

下園:講演では「誰でもうつになる」と言いながら、自分は絶対にならないという変な自信がありました。でも、まんまとそうなったわけです。

 翌日には師団等の幹部約500名を集めた重要な講演があったのですが、それもドタキャンさせてもらいました。私がラッキーだったのは、それを許容できる職場だったことですね。講師役を変わってくれる勇気ある同僚もいたし、メンタルヘルスを担当する部署だったので、休める雰囲気もあったのです。信頼できる精神科のドクターと一緒に活動していたので、すぐに受診し、うつの診断をもらいました。

 休養のため1カ月は完全に休みを取り、休み後も業務量を絞って勤務をするうちに、1年ほどで元の状態に戻ることができました。「また壇上で喋れなくなったらどうしよう」という恐怖のあった講演の仕事も、復帰から1年経った頃には再びできるようになりました。

暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ
次のページ
うつからの回復には「自信」がポイントになる