市川猿之助さんの自宅付近に集まった報道関係者ら
市川猿之助さんの自宅付近に集まった報道関係者ら

 現在の猿之助さんは4代目となるが、亡くなった父・市川段四郎さんの兄が「3代目」の猿之助にあたる。歌舞伎に詳しい評論家はこう語る。

「3代目猿之助は猛優(もうゆう)と呼ばれ、歌舞伎をぶっ壊す革命児であり、パイオニアでした。『スーパー歌舞伎』をつくったのも3代目です。現在の4代目は、それにポップなセンスを味付けした。3代目に比べると猛優ではないが、器用でアグレッシブ。歌舞伎界における自分の位置というのを常に考えている人だという印象です」

 亡くなった市川段四郎さんについてはこう話す。

「兄の3代目が太陽だとすれば、亡くなった段四郎さんは月で、対照的でした。段四郎さんは陰のある渋くて風格のある俳優でした。それが10年くらい前から、歌舞伎の舞台に全然出なくなった。松竹関係者に聞くと、体調不良で出られなくなったと。4代目は、父親の介護もしていたのではないかと思います」

 くしくも、19日は猿之助さんのプライベートも含めたスキャンダルを報じた女性週刊誌の発売日でもあった。出版関係者は「猿之助さんがこの報道を苦にした可能性はある」と話す。

「女性週刊誌の記者が猿之助さんに直撃取材したのは、月曜日(15日)の夜。週刊誌は発売日の1日前に『早刷り』が関係各所に出回るので、猿之助さんは水曜日(17日)に記事を目にした可能性はあると思います。記事の内容は、猿之助さんのプライベートまで深く知ると思われる複数の人物が彼のパワハラ、セクハラ疑惑を語っているものだったので、猿之助さんがそれを目にしたら大きなショックを受けたことは想像にかたくありません」

 実際にそのような行為があったのかは現時点ではわからないが、「客を呼べる役者」として猿之助さんが一門の中で強い力を持っていたことは事実だろう。

「今、客が呼べる役者としては片岡仁左衛門、坂東玉三郎、元海老蔵の市川團十郎、そして4代目猿之助の4人です。仕事はどんどん来るし、4代目自身、芸の上で苦難があっても、それを積極的に突破するパーソナリティーの持ち主。芸で悩んでいたとは考えにくく、原因があるとしたら私生活ではないか」(前出の評論家)

 猿之助さんの一日も早い回復と、本人の口からの説明が待たれる。

(AERA dot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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