爆風スランプ初の武道館から34年―――再現ライブで「大きな玉ねぎの下で」熱唱! サンプラザ中野くん「来年還暦を迎えます!」
爆風スランプ初の武道館から34年―――再現ライブで「大きな玉ねぎの下で」熱唱! サンプラザ中野くん「来年還暦を迎えます!」
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 1985年12月13日(金)爆風スランプ初の日本武道館ワンマンライブが開催。あれから34年後の2019年12月13日(金)同公演の再現ライブ【サンプラザ中野くん Style #5「突撃!チェルシーホテル’19」】が開催された。
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<初の日本武道館ワンマンライブと全く同じセットリスト>

 1985年の爆風スランプと言えば、彼らの代表曲「Runner」が『天才・たけしの元気が出るテレビ』きっかけで大ヒットする3年前。まだスターダムの階段を駆け上がる前の時代になる。ゆえによく存じない読者もいるかもしれないが、当時の彼らは聖飢魔II、米米CLUBと並ぶ「ソニー三大色物バンド」と呼ばれたり、人気音楽番組『夜のヒットスタジオ』出演時に火を使って消防署からクレームが来たり、スタジオ中を練り歩きながらスターたちと勝手に握手をしたり、テレビカメラの上に乗り上げたり、THE ALFEEのセットを破壊したりと大暴れ。そのキャッチーなビジュアルゆえコミカルに見られる一方で、完全なる問題児として注目を集めていた。そんな最中、本人たちも身分不相応と感じながらも決死の覚悟で臨んだのが、1985年12月13日(金)爆風スランプ初の日本武道館ワンマンライブ。

 あれから34年。あの日の日本武道館に居合わせた目撃者たちはもちろん、まだ当時はファンでなかった者たちやまだ生まれていなかった者たちも、伝説の再現ライブを体感しようと会場に駆け付けていた。その眼前にサンプラザ中野くんのライブでお馴染みのバンドメンバー(まみむめもっちー(b)、ジミー岩崎(key)、肉野バンバンジー(dr))、そして、34年前の今日も肩を並べていたサンプラザ中野くん(vo)とパッパラー河合(g)が登場し、あの日と同じように「えらいこっちゃ! えらいこっちゃ!」と満員のオーディエンスと幕開けからバカ騒ぎ。前述した時代の軽快な狂乱ムードを蘇らせるかのごとく、そのまま初の武道館ワンマンライブと全く同じセットリストで駆け抜けていく。

<スキンヘッドのメンバーがひとりからふたりに―――>

 本来、この手のメモリアルライブは郷愁全開の同窓会ムードで埋めつくされるモノなのだが、あの頃の爆風スランプの楽曲群はふざけた……失礼、パンクスをコミカルかつアイロニカルに体現したような……うん、やっぱりふざけたロックンロール(愛を込めてそう表現させて下さい!)ナンバーが大半を占める為、なかなかノスタルジックな感傷に浸るような展開にならない。しかし、それこそが当時の爆風スランプのアイデンティティーだったんだろうし、再来年には結成40周年を迎える大御所バンドでありながらカリスマ路線ではなく愛すべきロックおじさんとして親しまれ続けている所以だろう。「河合さん、あのとき(34年前の武道館で)帽子かぶってました?」「あのー、ピンクのカツラをかぶっていたかも……」「…………」「ハゲたんだよ!」―――大きく変わったことと言えば、スキンヘッドのメンバーがひとりからふたりに増えたことぐらいかもしれない(笑)。

 「最後に向かってどんどんどんどんどんどんどんどん幸せになろうぜぇ!」―――このMC通りの世界観を創造していった彼らだが、それが「せたがやたがやせ」「びっくりミルク」「美人天国」「うわさに、なりたい」「無理だ!決定盤(YOU CAN NOT DO THAT)」などなど小難しさも煩わしさも一切存在しない楽曲群によって完遂されていく痛快さ。今も昔もロックスターはどこか説教臭いメッセージを放つものだけど、それにみんな背中を押されて感涙しちゃう訳だけど、爆風スランプも「Runner」での大ブレイク以降はみんなの背中を押すアンセム的ナンバーをたくさんヒットさせていく訳だけど、この時代の彼らはやっぱり可笑しさが振り切れており、34年前にリアルタイムでこんなに面白い音楽を堪能していた諸先輩方に対しては、羨ましさしかなかった。また12月13日の金曜日を迎える年(次回は5年後、2024年)があったら再現したいと2人も話していたが、当時を知らないロックファンの度肝を抜く機会としてもまた実現してほしい。

<34年前の武道館を伝説にした立役者「大きな玉ねぎの下で」>

 そんな有意義な武道館再現ライブ、最後を飾った曲はもちろん「大きな玉ねぎの下で」だった。サンプラザ中野くんいわく「34年前に武道館で初めてやって、そのとき「絶対、人なんて来るわけがない」と思って言い訳の歌を作りました。熱いファンの方が武道館にやってきて、席が空いているのを見たときにですね、「なんだよ。俺の一生懸命応援している爆風スランプ、まだまだだなぁ……」とテンション下がったら悔しいなと思いまして。「そうだ! 空いている席にドラマをつくろう」ということで、「チケットは持っているのに来れない人がいたんだよ」と思わせる為に曲を作りました」―――それが「大きな玉ねぎの下で」だったらしいのだが、なんと初の武道館ワンマンは見事満員。言い訳ソングではなく、その後の爆風スランプが大ブレイクしていくストーリーの重要曲となった。

 そして、耳にした人の数だけのストーリーも生んできたであろう「大きな玉ねぎの下で」のフレーズひとつひとつに想いを馳せる満員のオーディエンス。1985年12月13日(金)爆風スランプ初の日本武道館ワンマンライブを伝説にした立役者が、2019年12月13日(金)同公演の再現ライブをも伝説にした瞬間だった。「みんな、5年後、武道館に行きたいかぁぁぁぁ!」「いぇーい!!!!!」「じゃあ、5年かけて……がんばります! ありがとう!」

<番外編のダブルアンコールで「Runner」>

 2024年12月13日(金)再びの日本武道館で更なる伝説を刻むことが出来るのか? これが実現できるかどうかは神のみぞ知るところだが、少なくともサンプラザ中野くんとパッパラー河合、そしてここに集いしファンたちがソレを願っていることは明白だった。そんな未来への希望を膨らませながら、ライブは番外編のダブルアンコールへ。中野と河合も参戦した【JALホノルルマラソン2019】のオフィシャルソング「ホノルル□ラブラン」(□=ハート)、そして「この曲をリリースしてからライブでやらなかったことはない」「パッパラー河合のラン仲間がこの曲を聴きたくて今日来てくれている」という理由から満を持して「Runner」が披露され、この先も走り続ける彼らと僕らの熱い熱いシンガロングが響き渡った。

 なお、サンプラザ中野くんは、2020年春に3枚目のミニアルバムをリリース。本人いわく「お年玉を親戚の子供にやらないで、5枚ぐらい買ってください(笑)」とのこと。さらに「来年はいよいよサンプラザ中野くんとパッパラー河合さんが還暦を迎えます! 何しましょうかね? 東京五輪の開会式に乱入しましょうかね(笑)?」と何かしたくて仕方ない様子だったので、きっと何かしら嬉しい楽しい展開も待っていることだろう。2020年も変わらず走り続ける彼らの動向に注目だ。

取材&テキスト:平賀哲雄

◎ライブ【サンプラザ中野くん Style #5「突撃!チェルシーホテル’19」】
2019年12月13日(金)渋谷CHELSEA HOTEL セットリスト:
01.えらいこっちゃ
02.来たぜ!!
03.せたがやたがやせ
04.びっくりミルク
05.青雲
06.オータム 
07.青春りっしんべん
08.The Good Bye
09.涙の陸上部
10.女の道
11.美人天国
12.たいやきやいた
13.狂い咲きピエロ
14.おしゃれな東京タワー
15.うわさに、なりたい
16.よい
17.週刊東京「少女A」
EN1.嗚呼!武道館
EN2.無理だ!決定盤(YOU CAN NOT DO THAT)
EN3.大きな玉ねぎの下で(令和元年 Ver)
WEN1.ホノルル□ラブラン(□=ハート)
WEN2.Runner